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更新2023.10.15

BMWのデザイン史にガツンと刻まれた、初代Z4の造形美に迫る

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往 機人

■鬼才と呼ばれるデザイナーが産み落とした歴史に残る高インパクトなデザイン



ドイツを代表する自動車メーカーBMWの歴史のなかで、自動車ファンに名車と認められたモデルはいくつもありますが、デザインの視点で見たときに後世に残るインパクトをもっとも強く刻み込んだ一台がこの「Z4」ではないでしょうか。


このZ4のデザインを統括した「クリス・バングル」は、1994年から10年にわたり、3/5/7シリーズを始めとする全ラインナップのデザイン改革を手掛けました。それまではマトリョーシカのように同じデザインのエッセンスを縮めたり伸ばしたりして各セグメントに当てはめるのが定石でしたが、バングル氏は、各モデルそれぞれに特徴的なデザインエッセンスを盛り込んで、一見しただけでそれぞれのモデルが見分けられるような差別化を実行しました。


のちに鬼才といわれるバングル氏の個性がいかんなく発揮されたデザインは、市場では賛否両論分かれましたが、どのモデルにも熱烈に支持するファンがいたことが、当時その状況を見ていた私の感想です。


そのエッセンスがもっとも色濃く込められたのがこの「Z4」だと、個人的には思っています。


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■今でも好きなデザインとして名の挙がるZ4だけど、当初は賛否両論だった



2002年にZ4が発表された当初は、単にZ3の後継なので3から4に数字が増えただけと思っていたのですが、他のシリーズではセグメント(車格)を表す数字はそのまま継承されていました。不思議に思って調べてみると、ボディサイズが大きくなり、価格も100万円ほど上げられたことが分かり、グレードアップの意味で数字が一つ増えたのだと考えました。


しかしそれから10年ほど経過してZ4初のモデルチェンジがおこなわれた後で振り返って考えたときに、このZ4が生まれる前と後では、デザインの手法や概念がガラッと大きく変革していたことに気付きました。そのときにハッと浮かんだのは、グレードアップだけでなく、G3からG4へ、ジェネレーションが変わったのではないか?という考えです。すこしこじつけ感はあるかもしれませんが、あながち間違っていないのではないかと思っています。


Z4が発表された際の私の率直な感想は、「なんかヘンチクリンなクルマだな」というものでした。その少し前に発表された「Z9」と共通の、両生類を思わせるノペッとした顔つきは好みではありませんでしたし、面の落差の激しい彫りの深い造形は、当時は子供っぽいものに感じました。


しかしそれから時が経つにつれ、徐々に「なんか、良いかも…」という見方の変化が訪れたのです。


欧州車は日本車の倍近い10年周期でモデルチェンジをするといわれています。そのため、デザインを考えるときには、10年以上先を見据えるという感覚が必要になります。したがって、発表当初は大胆すぎるように感じても、数年後にはそのインパクトが薄れて徐々に馴染むようになっていき、10年後も新鮮さがなくならないというデザインが理想なのです。


それを踏まえて初代Z4を見てみると、3代目が発売された20年以上経った今でも、まったく新鮮さを失っていないことに驚かされます。こういった存在感のあるクルマはそう多くはないと思います。


■現在でも色あせずに個性を放ち続けている、唯一無二の存在



具体的なデザインに注目してみましょう。まずはサイドのシルエットですが、英国車ジャガーのボンネット・マスコットを思い浮かべてください。似ていませんか?力を溜めた後ろ足の太腿の盛り上がりのようなリヤフェンダー。そこから引き締まったウエストのようにグッとボディが絞られ、前方に向けて襲いかかろうとする猫背の姿勢を感じるボンネットの盛り上がり。そして低く構えた頭部に至る。見事なまでに猫科の獣が獲物に向かって跳躍しようとするフォルムが再現されています。


その躍動感溢れるボディに、のびのびと走るキャラクターラインも秀逸です。ヘッドライトから前フェンダーの上を通って綺麗なアーチで下がっていくラインが後ろフェンダーの稜線に合流。そこから盛り上がってトランクフードのエッジを描きながらダックテールの先端に辿り着きます。


一方、おでこのボンネットの切れ目のラインは、前輪のホイールアーチを横切ってサイドのキャラクターラインに繋がり、重力に逆らうように登って後ろフェンダーの稜線に繋がります。


そしてもう一本の大胆に引かれた線が、このZ4を特徴付けるのにひと役買っています。それはフロントウインドウのAピラーの延長のように、ボディサイド前方をナナメに降りるラインです。このラインはただの線ではなく、彫刻のような造形によるもの、という他に類を見ない斬新な処理というのがポイントです。さらにはその線の中央にBMWの丸いエンブレムを配し、サイドマーカーまでも兼ねるという憎い演出には、完全に「やられた!」と唸ってしまいました。


これは余談ですが、その斜めラインと、上下二本のキャラクターラインが「Z」を表していると、マニアの間でウワサになっていたそうです。


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■もしBMWがクリス・バングルを起用しなかったらどんなデザインになっていただろうか?



このように、BMWの歴史にしっかりと足跡を残した初代Z4ですが、もしデザインの改革をクリス・バングルに依頼しなかったとしたらどうなっていたでしょうか?ここではその可能性を勝手に想像して楽しんでみましょう。


<その1>カーデザイン界の巨匠「ジウジアーロ」にオファーした場合


カーデザインの巨匠といえば数人の名前が挙がりますが、まずはいろんな車種のテコ入れを依頼されてきた「ジョルジェット・ジウジアーロ」の場合を考えてみましょう。彼の代表作は数々ありますが、メジャーどころだと、VW・GOLFⅠ、DMC・デロリアン、ロータス・エスプリ、日本ではいすゞ・117クーペやピアッツアあたりが有名でしょうか。


実はジウジアーロとBMWとの関わりは古く、1961年に発表されたBMW・3200CSが最初のようです(当時はベルトーネに在籍)。その後、1978年に発売された「M1」というミッドシップのスーパーカーもデザインしています。


ジウジアーロ・デザインの傾向は、全体的に直線基調でカチッとした構成が特徴で、プレーンな面構成を主体に、特徴的なグラフィックの組み合わせが多く見られます。躍動感に溢れるバングルとは対照的といえるかもしれません。
そのため、もしZ4をジウジアーロがデザインしたなら、マセラティ・3200GT(1998年〜)のデザインエッセンスを構成し直したものになっていたのではないかと想像します。



<その2>カーデザイン界の花形「ピニンファリーナ」にオファーした場合


イタリアを代表するカロッツェリア(自動車工房)である「ピニンファリーナ」。古くからフェラーリのほとんどの車種をデザインしてきたことでも有名ですが、アルファロメオやプジョーなどイタリア以外のメーカーの依頼にも応えて名デザインを生み出しています。


そのデザインをひと言でいうと「流麗」でしょうか。見る者の目を楽しませ、うっとりさせてくれる美しい面の構成や、流れるようなキャラクターラインの処理など、美意識の高いイタリアならではといえる官能的なデザインが特徴といえるでしょう。


そんなピニンファリーナがZ4のデザインを手掛けたとしたら?参考になるのはZ4の開発時期と近い1990年代の後半にデザインされた、「フェラーリ・Mithos(ミトス)」や「ピニンファリーナ・Ethos(エトス)」といったコンセプトカーでしょう。どちらも(ミッドシップですが)オープンカーで、側面の、前後からキャラクターラインが切り込む面構成が印象的です。


この要素とBMWのキドニーグリルを組み合わせて整えたものが下のイメージスケッチです。



■実現しなかった組み合わせだけど、今後コラボする可能性はゼロではないかもしれない


もう20年以上になる時代にさかのぼって「もしも…」の想像をカタチにしてみましたがいかがでしょうか?同じカーデザインが好きな仲間と、気になるクルマを前にしてあーでもないこーでもないと好き勝手に語らい合っていたときを思い出しました。それもこれも、そのクルマが気に入っているからこそできることだと思います。この記事を読んでくれているあなたも、気に入ったクルマのifストーリーを想像して楽しんでみてください。さらに愛着が高まるかもしれません。


[ライター・往 機人 / 画像・BMW]

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