
コラム
更新2020.08.20
BMW850i。それは20世紀末に誕生した淑女だったのかもしれない
松村 透
BMW850i。日本でも滅多に見掛ける機会がなくなりつつあります。たまに見掛ける8シリーズ(E31)も、良く観るとV8エンジンを搭載した840iであることが多いように感じます。

そんな8シリーズの最高峰モデルにあたるBMW850iがデビューしたのが、1990年のことでした。それまでのBMW6シリーズよりも、大きく、豪華に、そして高級なパーソナルクーペとしてデビューを果たしました。エンジンは300psを発揮する5.6リッター、V12エンジンを搭載。いまとなっては懐かしい、リトラクタブルヘッドライトを採用していました。
位置付けとしては、当時4ドアセダンの最高峰モデルだったBMW750iのクーペモデルが8シリーズとなります。メルセデス・ベンツSクラス(W126)とSクラスクーペ(C126)に近い相関関係といえるかもしれません。
日本には正規輸入されていませんでしたが、850iには4速ATの他に、当時としては珍しい6速MTモデルが用意されていました。話題性と先進性を兼ねてか、6速MTが先行して開発されたというエピソードがあるほどです。
カタログ値によると、0〜100km/h加速は8.8秒(6MT)、9.4秒(4AT)という数値。現代なら、ちょっとしたスポーツセダンでもあっさりと5秒台を切ってしまうような感覚からすれば、ずいぶんと穏やかな加速性能を持つクルマであることが分かります。
サスペンションは、フロントは基本的に7シリーズと構成を同じくする、ダブルスプリングストラット。リアはマルチリンク。オプションでEDCと呼ばれる、走行状態に応じて4段階のダンパーのセッティングを切り替える機構が用意されていました。
タイヤサイズは前後とも235/50ZR16。全長4780mm、全幅1855mmというボディサイズ。参考値として、現行6シリーズの全長が4895mm、全幅は1895mmです。タイヤサイズは、フロントが245/40R19、リアが275/35R19と比較しても、控えめな印象を持ちます。
室内も、シートはもちろんのこと、ダッシュボードやドアの内張りなどを含めた仕立ては、意外なほどシンプルです。正直にいってしまえば、当時BMWの最高峰に君臨するモデルとしては、いささか華やかさと派手さに欠ける部分があるようにも思えてきます。
ご存知のように、現代のBMWで8の数字を冠したモデルといえば「i8」が存在します。アルピナが8シリーズをベースに開発したB12クーペも存在しました。当時、幻となったBMW M8の販売を心待ちにした方もいたのではないでしょうか。
見掛ける頻度が増えつつあるi8とは対照的に、850iを含めた急激に数を減らしつつあるE31型のBMW 8シリーズ。筆者も、数年前の年の瀬に、近所に住む友人から「ワインレッドの850iが売られている!」と連絡があり、すぐに観に行ってみました。
畑の片隅の駐車スペースに、ワインレッドの850iがぽつんと置かれていました。記憶では1991年式。車両本体価格は29万円でした。いくらなんでもあんまりだと思ったことはいまでも忘れられません。その後、年明けに観に行ってみたら、既にワインレッドの850iの姿はありませんでした。そして、2度とその姿を見ることはありませんでした。
BMWの貴婦人たる8シリーズ(E31)、10年後にはどのくらいの個体が現存しているのでしょうか。
[ライター/江上 透]

そんな8シリーズの最高峰モデルにあたるBMW850iがデビューしたのが、1990年のことでした。それまでのBMW6シリーズよりも、大きく、豪華に、そして高級なパーソナルクーペとしてデビューを果たしました。エンジンは300psを発揮する5.6リッター、V12エンジンを搭載。いまとなっては懐かしい、リトラクタブルヘッドライトを採用していました。
位置付けとしては、当時4ドアセダンの最高峰モデルだったBMW750iのクーペモデルが8シリーズとなります。メルセデス・ベンツSクラス(W126)とSクラスクーペ(C126)に近い相関関係といえるかもしれません。
日本には正規輸入されていませんでしたが、850iには4速ATの他に、当時としては珍しい6速MTモデルが用意されていました。話題性と先進性を兼ねてか、6速MTが先行して開発されたというエピソードがあるほどです。
カタログ値によると、0〜100km/h加速は8.8秒(6MT)、9.4秒(4AT)という数値。現代なら、ちょっとしたスポーツセダンでもあっさりと5秒台を切ってしまうような感覚からすれば、ずいぶんと穏やかな加速性能を持つクルマであることが分かります。
サスペンションは、フロントは基本的に7シリーズと構成を同じくする、ダブルスプリングストラット。リアはマルチリンク。オプションでEDCと呼ばれる、走行状態に応じて4段階のダンパーのセッティングを切り替える機構が用意されていました。
タイヤサイズは前後とも235/50ZR16。全長4780mm、全幅1855mmというボディサイズ。参考値として、現行6シリーズの全長が4895mm、全幅は1895mmです。タイヤサイズは、フロントが245/40R19、リアが275/35R19と比較しても、控えめな印象を持ちます。
室内も、シートはもちろんのこと、ダッシュボードやドアの内張りなどを含めた仕立ては、意外なほどシンプルです。正直にいってしまえば、当時BMWの最高峰に君臨するモデルとしては、いささか華やかさと派手さに欠ける部分があるようにも思えてきます。
ご存知のように、現代のBMWで8の数字を冠したモデルといえば「i8」が存在します。アルピナが8シリーズをベースに開発したB12クーペも存在しました。当時、幻となったBMW M8の販売を心待ちにした方もいたのではないでしょうか。
見掛ける頻度が増えつつあるi8とは対照的に、850iを含めた急激に数を減らしつつあるE31型のBMW 8シリーズ。筆者も、数年前の年の瀬に、近所に住む友人から「ワインレッドの850iが売られている!」と連絡があり、すぐに観に行ってみました。
畑の片隅の駐車スペースに、ワインレッドの850iがぽつんと置かれていました。記憶では1991年式。車両本体価格は29万円でした。いくらなんでもあんまりだと思ったことはいまでも忘れられません。その後、年明けに観に行ってみたら、既にワインレッドの850iの姿はありませんでした。そして、2度とその姿を見ることはありませんでした。
BMWの貴婦人たる8シリーズ(E31)、10年後にはどのくらいの個体が現存しているのでしょうか。
[ライター/江上 透]