ドイツ現地レポ
更新2017.05.22
旧東ドイツのクラシックカー「トラバント」をベルリンで楽しもう!
守屋 健
▲雨のベルリンを颯爽と走り抜けるトラバントP601
旧東ドイツの象徴「トラバント」
代表的なP601は全長3.5m、全幅1.5mと現代の目から見ればとてもコンパクト。ラダーフレーム上に一部FRPで作られた4人乗りのボディを載せる構造で、車重は620〜660kgほど。23馬力を絞り出す594ccの2ストローク空冷直列2気筒エンジンが、比較的軽量な車体を100km/h前後まで引っ張ります。
トラバントは1958年から1991年まで大規模なモデルチェンジがないまま生産されたため、ベルリンの壁崩壊後は時代遅れとの烙印を押され、急速に淘汰されていきました。ところが、近年の「オスタルギー」(旧東ドイツ懐古主義)の流行や、当時トラバントに乗りたくても乗れなかった自動車好き(西側にもトラバントのファンがいたそうです)により再評価され、ドイツ全体では約3万台が現存。
排ガス規制により、歴史文化財としての特別走行許可証(Hナンバー)を取得した車両のみが走行可能なのですが、ドイツの首都ベルリンでは比較的多くのトラバントを街中で見ることができます。さあ、トラバントに会いにいきましょう!
トラバントをじっくりと観察!「DDR博物館」
ベルリンが誇る世界遺産、博物館島。堂々とそびえるベルリン大聖堂の裏手、シュプレー川を挟んだ場所に、DDR博物館があります。DDRとはDeutsche Demokratische Republikの略で、旧東ドイツの概要を紹介する博物館となっています。2006年の開館から2017年3月までに470万人以上が訪れた、非常に人気のある施設です。
画像提供:www.ddr-museum.deより
画像提供:www.ddr-museum.deより
▲博物館の外観と展示の様子。扉を開けたり、クイズに答えたり、と仕掛けのある展示が多く、見学者を飽きさせません
こちらに、トラバントP601の実車の展示があります。間近に見られるだけでなく、運転席に座ることもできます。そしてフロントガラスには映像が……そう、ドライブシュミレーターになっているのです。
画像提供:www.ddr-museum.deより
画像提供:www.ddr-museum.deより
▲子どもにも大人にも大人気なので、週末は少し待つかもしれません
街中でも走り回っているトラバントを見ることは可能ですが、ここではじっくりと細部を観察することができます。博物館併設のショップにはもちろん、トラバントのミニカーもありますよ!
100台以上のトラビがお出迎え!「トラビ・ワールド」
「いやいや、ドライブシュミレーターではなく、実車を運転したいんだ!」そんなあなたの願いも、もちろん叶えることができます。ベルリンが東西に分断されていた時代の、かつての国境検問所のひとつ、チェックポイント・チャーリー。多くの観光客で賑わう元検問所から徒歩3分ほどの場所にあるのが、その名もトラビ・ワールドです。
▲「トラビ・ワールド」の外観。看板が少し剥がれてしまっていますが……
▲ずらりと並んだカラフルなトラバント、その所有台数は100台以上!
ここでは実際にトラバントに乗って、ベルリンの街を巡る観光ツアーが開催されています。各車両には無線機が備え付けられていて、先導車に率いられながら、無線機から流れてくる名所案内を聞きつつドライブします。現在は「コンパクト」と呼ばれる1時間のコースと「XXL」と呼ばれる2時間のコースの2種類が用意されていて、マニュアル車を運転できる国際免許証を持っていれば、自分で運転することができます。
▲2ストローク特有のパンパン……という軽快な音を響かせて出発していきます。
▲こちらは「コンビ」と呼ばれる、ステーションワゴンタイプ。独特の排気ガスの匂いも懐かしさを感じさせてくれます
トラバントの4速ミッションはノン・シンクロメッシュなので、スムーズな変速にはダブルクラッチが必須、かつコラムシフトなので少々慣れが必要ですが、ツアー出発前にはきちんとレクチャーしてくれるそうです(ドイツ語もしくは英語での対応になります)。
基本的には要予約ですが、場合によっては飛び込みでの乗車も可能とのこと。屋根のないオープンタイプの「コンバーチブル」や、排気ガスが全く出ない、環境に優しい電気自動車に改造された「E-Trabi」も同料金で予約することが可能です。「コンバーチブル」を予約していたにも関わらず、当日雨が降ってしまった場合は、屋根付きのモデルを用意してくれるそうなので、安心ですね!
▲「E-Trabi」と呼ばれる電気自動車改造タイプ。充電中でした。
▲名物料理「ブラートヴルスト」を頭に乗せた改造トラバントを発見!
▲ショップのトラバントグッズは充実の品揃え。
もともとドレスデンで開業したこのツアー、2002年ベルリンに進出して以降も老若男女問わず世界中から多くの人々が訪れるそうですが、スタッフの方にお話を伺ったところ「正確に数えているわけではないけれど、日本からのお客さんはとても少ないよ」とのこと。日本ではまだあまり知られていないこのツアー、ベルリンに来られた際は一度体験してみてはいかがでしょうか?
番外編・DDRのお土産ならここ!「VEB Orange」
▲独特の色合いが特徴の外観と、店内の様子。まるでタイムスリップしたかのよう。
資源が乏しくても、デザインに優れたプロダクトが多かった旧東ドイツ。当時の雑貨や家具を専門に扱うショップが、ここに紹介する「VEB Orange」です。最近では蚤の市でも見つけにくくなった旧東ドイツの製品が、所狭しと並べられています。「旧東ドイツの魅力にどっぷり浸かってしまった、何か良いお土産を買って帰りたい……」という方におすすめです!
▲取材時、お店の前にはトラバントP601コンビが駐車していました
▲シンプルなインパネ。燃料計はないので、給油口から棒を入れて残量を確認したり、距離計から次回給油時期を推測したりしていたそうです。ハンドル右の棒がシフトレバー
▲ステーションワゴンタイプ、その貴重な後ろ姿
【取材協力】
店名:DDR博物館
住所:Karl-Liebknecht-Str. 1, 10178 Berlin
営業時間:10:00-20:00(土曜日のみ10:00〜22:00)
定休日:無休
公式サイト:http://www.ddr-museum.de/
店名:トラビ・ワールド(ベルリン営業所)
住所:Zimmerstraße 97, 10117 Berlin
営業時間:10:00-17:00
定休日:無休(元日を除く。市内のマラソン等で休む場合あり)
公式サイト:http://www.trabi-world.com/
店名:VEB orange
住所:Oderberger Str. 29, 10435 Berlin
営業時間:11:00-19:00
定休日:日曜定休
公式サイト:http://www.veborange.de/
[ライター・カメラ/守屋健]