更新2023.10.21
有名ホイールメーカー、ドイツBBSが破産申請。ドイツのカー用品業界の状況とは?
高岡 ケン
クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるであろうドイツの有名ホイールメーカー「BBS」。
1970年創業の歴史ある企業のBBSが2023年9月28日、地方裁判所に破産申請が提出された。
世界的にも有名なホイールメーカーに一体何があったのか。
ドイツ現地で調査を行った(※なお、BBS automotive GmbHとBBSジャパン株式会社には資本関係はない)。
■今回で4度目の破産だった?
BBSの3文字は、創業者の名前と所在地(Baumgartner, Brand, Scoltach)を表している。
同社は1970年に創業以来、高級車のカスタムホイールをメインに販売を行ってきた。
2001年には、本社があるシルタッハに続き、ヘルボルツハイムに第二工場を設立した。
F1ドライバーで元世界チャンピオンのミハエル・シューマッハが愛用しており、同社の製品を使用してF1を走ったことから、その名は世界中へと知れ渡った。
「軽量」と「剛性」を兼ね備え、圧倒的な存在感と唯一無二のデザインでこれまでに多くのファンを獲得してきた。
300名ほどの従業員を抱えており、昨年の売上高は約5000万ユーロ(現在のレートで約80億円)と順調に見えたのだが・・・。
実はBBSは、過去16年間で4回目の破産に陥っている。
2007年、2011年、2020年、そして現在と破産申請を余儀なくされた。
2021年6月にはサスペンションのメーカーで有名なKWオートモーティブが同社を引き継いだが、再建を行うのは難しかったようだ。
■2.破産の理由はエネルギー価格の高騰
同社内部関係者によると、破産の理由は2つあると考えられる。
ひとつめは、現在のエネルギー価格の高騰であり、特にBBSのようなエネルギー集約型企業には多大な影響を与えている。
ロシアとウクライナの戦争が始まって以来、ドイツは大幅にエネルギーコストが上昇している。
電気代に至っては増加の一途を辿っており、イルミネーションが綺麗なドイツのクリスマスマーケットを中止するか否かと話し合いが行われるほどだ。
また、電気代を節約するため、電気を付けずに薄暗い中、仕事をしている会社も少なくない。
さらに、インフレの上昇に伴う価格高騰により、消費者は高級車用の高品質アルミホイールの購入を躊躇するようになった。
BBSが本来目指していたのは、自動車メーカー(OEM)との取引を縮小し、専門店やインターネットを通じて、消費者へと直接販売することだった。
しかし、「アフターマーケット」事業も結果として思うように発展しなかった。
■3.倒産が相次ぐドイツのカー用品業界
現在、ドイツのカー用品業界は非常に困難な時期にある。
今年8月には、ルーフボックスでよく知られているアクセサリーメーカーのkamaiが破産申請を行った。
先月9月には、電動配送バンメーカーのB-ONも同様に破産申請を行っている。
これらの相次ぐ倒産にエネルギーコストの上昇が原因のひとつとなったのは間違いないだろうが、もう一つは「若者のクルマ離れ」も関係しているのではないだろうか。
もはや「若者」に限らず、クルマを所有しているオーナーすべてがと考えてもいいだろう。
過去には、クルマ=ステータス、クルマ=趣味、クルマ=男のロマンなど。
「クルマ」を移動手段や生活に必要な「モノ」としてではなく、自分の「一部」として乗っている人がお多かったのではないだろうか。
自身の愛車をキレイし、自分好みにカスタムしてみたり、ホイールを交換して友達に自慢したり。
そんな光景が日常的にあっただろう。
それが今では、クルマをカスタムするどころか、クルマ自体に興味がない人を多く見かける。
一昔前とは比べ物にならないくらいに。
これは時代の流れであり、多くの消費者がクルマ以外のものに消費を行うようになったのは明らかだ。
今後もカー用品業界、強いては車業界全体にとって厳しい時代となるかもしれない。
[画像/Adobe Stock・ライター/高岡ケン]