ドイツ現地レポ
更新2015.11.20
ドイツの鉄道事情を覗いてみる。日々の安全を支える「ドイツ鉄道建設グループ」とは
NAO
通常の旅客列車であれば赤または白のボディに「DB」と表記されているのですが、こちらに書かれているのは「鉄道建設グループ(Bahnbau Gruppe)」。
なんとも複雑な造りの車両です。一体何の列車なの!?と調べてみると「ドイツ鉄道建設グループ」が使用している保線車両でした。今まで「ドイツ鉄道」という会社名しか知らなかった筆者は初めてこの会社の存在を知りました。私たちを目的地まで運び、繋げてくれる鉄道。今回はその土台を作り出す「ドイツ鉄道建設グループ」に目を向けてみましょう。
一体どんな会社なんでしょうか?
ドイツの東西統一と同時に民営化された「ドイツ鉄道(略称DB)」はベルリンに本社を置くドイツ最大の鉄道会社。欧州でもトップクラスの技術と輸送交通網を持っており、世界的にも実力を持つ会社です。「DB」というのはドイツ鉄道グループの総称であり、そのなかでも旅客部門・貨物部門・運営管理部門などと大きく分けて3つのグループ子会社が存在します。その中の運営管理部門(DB Netze)にあたる「ドイツ鉄道建設グループ(Deutsche Bahnbau Gruppe)」もこのグループの一員で、元々は「ドイツ鉄道 鉄道建設会社(DB Bahnbau GmbH)」「ドイツ 線路・地下建設会社(Deutsche Gleis- und Tiefbau GmbH)」「ドイツ鉄道 線路建設会社(Deutsche Bahn Gleisbau GmbH)」「機関・橋・地下建設会社(Ingenieur-, Brücken- und Tiefbau GmbH)」とそれぞれ会社が独立していましたが2010年ドイツ鉄道建設グループに全て吸収されました。今は一つの会社として、ドイツ国内及びユーロ圏での鉄道設備建設に関わっています。
どんな仕事をしているのでしょうか?
ドイツ鉄道建設グループの主な仕事は大まかに分けると、鉄道レイル製造・装置&関連機器製造・線路建設・特別建築製造の4つになります。
1.鉄道レイル製造:レイルの製造と設置や溶接作業を行う。
2.装置&関連機器製造:地上及び地下の信号通信装置や電線設置、安全装置の開発など。レイル設置作業のための機械製造もこの管轄が担当している。
3.線路建設:コンベアを使い線路の安定と安全を管理し、老朽化した線路等あれば専用の列車(保線車両)を使用して砂利・枕木などの部品の入替・補てんなどをする。
4.特別建築製造:大型の駅(中央駅など)の建設、橋建設など主に駅建築・運営管理の担当をする。古くなって交換済みの部品などを溶かして駅に再利用するなど、環境保全に尽くした建設も行っている。
冒頭に載せた写真の保線車両はCSM 09-32型のマルチプルタイタンパーと呼ばれるものらしく、列車走行の際に生じるレイルのゆがみを矯正するために使われるものだそうです。電車が走行した振動で枕木が沈みレイルがゆがむと、乗り心地が悪くなる上に高速走行の障害にもなるらしく、安全な走行の為には定期的な検査が必要になります。この機械が導入される前はすべてが人による手作業で時間も労働力も多大なものでしたが、今では10人にも満たない人数で操作・監視・作業ができるまでになりました。構造としてはレイルと枕木を機械でわずかながら持ち上げ、その間に砂利を突き固めていくと持ち上げた隙間に砂利が入り込み枕木の高さを調整することで保線していきます。現在の技術では、1時間で2.3キロメートルまで保線作業することが可能だそうで、ホームを一日完全閉鎖することもなく短期間で仕上げることができるようです。
ちなみに、このマルチプルタイタンパーのほかにもドイツ鉄道建設グループが誇る「高速転換マシン」というのもあり、こちらは線路の解体から設置まで一台ですべてこなす優れもの。先頭車両で解体作業をし、後続車両でレイルの交換・枕木と砂利の補填を行い作業効率をアップさせ、鉄道業務に影響が出づらいようにしています。
こちらはドイツ鉄道が使用している高速転換マシンの参考動画です。
ドイツの鉄道駅では、至る所で工事しているのを見かけます。常日頃からメンテナンスを行っており、乗り心地や技術に関してはさすが職人気質の国といいますかこだわって造り上げていると思います。(ドイツ鉄道の「サービス」というのは正直なところ「素晴らしい!」とは言えないのが現地民の本音なのですが。)ドイツの生活において重要な役割を果たしている鉄道。電車に乗っている間に線路で作業している人たちを何気なしに窓から眺めていましたが、私たちが日々当たり前のように安全に移動ができているのは建設グループの取り組みをはじめ、従業員の方たちの働きがあってこそなのだと改めて実感しました。今や利用客の減りに頭を抱えているドイツ鉄道ですが、この先ドイツの「鉄道」という存在はどのように変化していくのでしょうか。