こだわりの通勤グルマ？いい感じに年季の入ったアストンマーティン V8

普段マセラティに乗っていると、ある課題がじわりじわりと湧き出すのです。それは「この次どうしようか？」という話。別に速やかに乗り換える必要があるわけでもなく、それを許す状況でも無論ないのですが（汗）クルマ好きたるもの、必要か不必要かにかかわらず、また誰に頼まれたわけではなくとも、必ずと言っていいほど考えていることはこういうことなのではないでしょうか。まあそんなレベルでのお話です。

マセラティの次は何にするか。正直ころびようがわからないでいるのです。メルセデスやBMWは毛色が違います。ちゃんとご商売を成功させて買う高級車。ビジネスマンの風情が強いですよね。マセラティには有名な金時計がついていますが、まあ時計が必要な人はそもそもその想定顧客ではないのではないか。そんな風に思うのです。

ベントレーやロールス・ロイス。これも違う。「You，爵位もらった？」と聞かれそうだとは思いませんか？ただ、ここには一定の示唆があるとは思います。その、一国を代表する高級車は、その国のきわめてローカルな事情を反映していることが多いということ。



マセラティはイタリアの最高級車。イタリア社会においての、という枕詞を与えて考えると少しわかりやすいかもしれませんね。大きな領地を持っていて、ブドウ畑などを管理していて、先祖からの資産を守りながら、そんなブドウでワインなんか作っていそう。マセラティの顧客ってそんなイメージなんです。私の中では。少なくとも何時までに出勤して何時にどこでアポがあって、何時に終業。そういうリズムではないイメージ。

一番後釜候補で違うのは、フェラーリだと思うのです。価格は高いですが、プレスティッジはマセラティの方がおそらく上。いまだに侵しがたいものをここには感じます。同時所有はありですが、後釜ではないイメージですね。（456GTなんて素敵だと思いますが。）

そこで唯一ありかなと思うのはアストンマーティン。いいのではないでしょうか。まあこれだってクーペメインのモデルラインナップの高級車メーカーですが、ことあるごとにシューティングブレークが用意されたり、と、おそらくご自分のお屋敷の敷地の中で借りができたりする方の乗る乗り物なのでしょう。そして絶対的に高いプレスティッジを誇りながら、その高いか低いかを問題にするのではなく、その先のライフスタイルの演出をかなりキャラクターの中に強く持っている、そう見られているブランドだと思うからです。



ドイツからは通勤風景でしょうか、いい感じに年季の入ったアストンマーティン V8ですね。写真が送られてきました。

朝食は大事なんて言われますが、朝こういうクルマで通勤したら、流石にその日一日に差が出そうですよね。ちなみに筆者、あだなが「込氏（ごみし）」でして、数字を当てると534。このクルマのパワープラントのV8エンジン排気量が5340㏄である点は看過できないと思っております(笑)

いいクルマは、ステアリングを握るものに、「胡坐」はかかせません。むしろどこか律するようなところがあります。襟を正すというか、しゃんとする。クルマはなんでもいい、確かにそうなのですが、このくらいの高級車に乗ることは決して無意味ではない。マセラティに乗ったあとでステアリングを握ったアストンマーティンは、その流麗なそのフォルム、アピアランスとは裏腹に堅牢で重厚なタッチで思わずほろりとしてしまったものです。一生のうちでもしご縁があったら、私もアストンマーティンで一日のスタートを切る暮らし、してみたいものですね。

［ライター/CL編集部・中込健太郎　カメラ/ドイツ駐在員］