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更新2020.07.30
逃して後悔するなら、手に入れて後悔したい。ランチア ストラトスHFのキットカー、ホークHF2000をカーシェアしてしまうオーナーとは?
外車王SOKEN PROMOTION
あのフェラーリ ディーノと同じエンジンを心臓に持つランチア ストラトスHFは、1972年末からラリー世界選手権に実戦投入されました。ミッドシップ・横置きにエンジンを搭載し、前後のホイールベースが極端に短く設計されたストラトスは、その特性を活かして1974年〜76にかけてワールド・ラリー・チャンピオンシップを獲得しました。
しかし、高額な車両本体価格の影響なのか、1972年から75年までの生産台数は492台のみ。現存する個体はさらに数がしぼられることが容易に推測できます。
そんな希少車であるランチア ストラトスHFにはレプリカモデルが造られました。今回のオーナーは、そのレプリカモデル「ホークHF2000」を所有し、Anyca(以下、エニカ)に登録されていらっしゃるそうです。
ランチア ストラトスHFのレプリカモデルといえども、貴重なクルマであることに変わりはありません。それほど貴重なクルマをなぜエニカに登録してみようと思ったのか?実際に登録してみたメリット/デメリットはどのような点なのか、取材を試みました。
・オーナープロフィール
お名前:tommyさん
年齢:40代
性別:男性
職業: 自営業
居住地:東京都
愛車:ホークHF2000(ランチア ストラトスHFのキットカー)
URL:https://anyca.net/car/13461
エニカに登録しようと思ったきっかけを教えていただけますか?
登録させていただいたのは確かサービスが開始された年(2015年)だったと思います。
エニカ自体、まだどんなものなのかもわからない頃ではありましたけれど、面白い取り組みだなと思ったのがきっかけですね。
それと、このホークは2台目なんですが、やはり普通のクルマではないんですよ。ちょっと乗って近場ドライブしても、それが冒険になるような…、日常とは違うところに行ってくれる体験ができるので、この種のクルマが好きな方と同じ思いを共有できたら面白いかな、と考えたんです。
これまで乗り継いでこられた愛車遍歴を教えていただけますか?
レガシィ セダン(初代)です。「RS-type RA」というモデルが最初のクルマになります。ロールバーやアンダーガードを付けて国内のラリーにも参戦していました。
そのうち仕事も忙しくなってきたので数年で引退したのですが、ロールバーを組み込んであるし、それほど痛んでいなかったので、その後も自分でメンテナンスしながらサーキットで遊んだりしつつ、現在も所有しています。見た目は白いセダンなので、スポーツ走行も楽しめるクルマですが、冠婚葬祭にも行けるので便利です。
エニカに登録しているホークの方は2台目になります。5年くらい前に中古車として購入、こちらもコツコツ直して楽しんでいます。
レガシィ セダン(初代)と同じラリーフィールドで活躍したクルマですが、運転した感覚はまったく別のもので面白いですよ!それと、このホークはやっぱりお子さんにモテモテ(笑)で、走ってても停まっていても、手を振ってもらえるのがちょっと嬉しいですね。
現在の愛車を手に入れたきっかけは何でしたか?
オリジナルのランチア・ストラトスは、子供のころからの憧れのクルマでした。
しかし、自分が所有することは現実味のないことだと感じていました。まして、WRCに参戦していた個体は文化遺産みたいなものですから、よほど生活に余裕がない限り個人が趣味で所有するレベルを超えていますよね。でも、心のどこかで「いつか乗りたい」と思っていたんでしょう。あまり意識したことはなかったんですが、ホークならフルオリジナルにこだわらなくてもいいから自分でメンテできるよな、なんて漠然と思っていたら突然機会が巡ってきたんです。こういうチャンスは逃して後悔すると取り返しがつきませんから、「手に入れて後悔する」ことにしました(笑)。
貴重なクルマだけに、正直心配な部分はありませんでしたか?
それはありますけれど、シェアしてくださるとしても、私の心中を察してご理解くださる方ばかりなので、今のところ大丈夫ですね。
どこかにぶつけてしまったり、擦ったということでなくても、普通に走っているだけでも、たまたま運悪く壊れてしまったりすることもあるんじゃないかと思います。そういうところも丸ごと含めてホークHF2000というクルマなんです。
シェアしていただいているときに停まって動かなくなったことはありませんが、帰ってきたらドライブシャフトのゴムブーツが裂けていたことはあります。これは国産車でも起こりうることですし、後日、自分で直してしまいました。パーツ代も1,000円くらいです。これくらいなら大したことでもないですよ。
こんなネガディブなことも普通のクルマでは体験できないことですし、ある種の冒険にはつきものかなと思っています。いわば、乗り越えられる障害イベントみたいなものです。できる限りフォローはしますが、やはり「冒険」なので、自分で起こした行動や判断はすべてご自身で責任を取っていただく…、ということでご理解をお願いしています。
シェアする際の判断基準はありますか?
エニカさんの規定などもありますが、利用説明を追加させていただいています。
ホークHF2000は普通のクルマとはだいぶかけ離れていますので、注意点がいくつかあります。ブレーキサーボがないのでペダルがとても重たいとか…。趣味車や競技車に乗っている方でしたら、ある種のセオリーとしてご理解いただけるので話は早いのですが、そうではない方には最初に同乗してレクチャーしています。運転技術に関する基本的なところはMT車が運転できれば大丈夫だと思います。
ただ、最近のクルマであればほぼ標準装備されているエアバックをはじめとする安全装備などがありませんし、ホークHF2000の成り立ちからして「安定性を削って運動性を高めている」ところがありますので、公道でスポーティーな運転を試そうとすることは控えていただいています。そういった走りは、サーキットで存分にやってはじめて楽しくできることだと考えています。
実際、駐車場を出る際に「タイヤをひと転がししただけ」でクルマの軽さがわかりますし、制限速度まで出さなくてもミドシップならではのフロントの軽快なハンドリングや、パワーアシストがないからこそのグリップが本当に手に取るように分かるステアリングフィールなど、ホークHF2000でしか体験できないことでお腹いっぱいになっていただけると思います(笑)。
どのような方がシェアされますか?
やはり、オリジナルのランチア・ストラトスをご存じで、ずっとお好きな方ですね。あとは以前、ストラトス レプリカの購入を検討されていた方もいらっしゃいました。ホークHF2000や、キットカー、レプリカ車が目的というのがこういうクルマならではの傾向でしょう。
このようなクルマですし、正直多くの方からリクエストいただくような種類のものではないんです。その分、予約が埋まってしまうというようなことはないので、ご都合のよろしいときに乗っていただけると思います。
エニカに登録したことによるメリット/デメリットを率直に教えてください
・メリット
ランチア・ストラトスが好きな方はもちろん、ホークHF2000のようなかなり変わったキットカーがお好きな方と知り合いになれるところでしょうか。趣味のクルマをお持ちだったり、経験者の方ばかりなので、いろいろなお話が聞けるのもメリットだと感じています。
それと自分はもう慣れてしまったのであまり気にならないのですが、初めて乗る方が、ホークHF2000の気になるところを知ることができるのはいいですね。今後のメンテナンスにも役立ちます。
・デメリット
特にありませんが、ご利用いただく場合は大抵朝からになるため、予約がある休日には寝坊ができないというところでしょうか。あとは、クルマを直すのも結構楽しんでやってますので、予約が入ってしまうと前後のスケジュール調整をしなくてはならないのがいささか面倒、ということは少し贅沢な話しかもしれません。
エニカに登録して、気づいたことや想定外だったことはありますか?
想定外なこととして、ホークHF2000を登録はしてみたものの、いきなり乗ってみたい!といったような問い合わせはないだろうと思っていたんです。しかし、実際には登録してすぐにお問い合わせいただいて、成立してしまったことですね。
この種のクルマって、万一壊したり、ぶつけたりしたらどうしようとか、停まってしまうんじゃないかとか、不安を感じる要素がたくさんあるだろうから、問い合わせはほとんどないんじゃないかと思ってましたので。
ただ、いきなり1日利用だとやはりハードルが高いので、もうちょっと手軽なパッケージが作れるといいかな、とも思います。
私自身、ホークHF2000でワインディングに行ったりもするので、そこで数時間、同乗体験とかができるともっと間口が広がるかなと思っています。皆さまからリクエストがあればそんなこともやってみてもいいかなと考えています。
興味はあるけれど、現在登録を検討している方へメッセージをお願いします!
クルマって利便性の道具と趣味的な嗜好品という2つの面があって、ホークHF2000は、極端に後者のクルマですから、多くの方にとってあまり参考にならないかもしれませんが…。
得られるお金は対価ではあるけれど、リターンを目的にするなら正直もっと資金効率のいい方法もありますよね。でもそうでないメリットを自分なりに見つけられるとしたら、思い切って登録してみても良いのではないでしょうか。私の場合、クルマに対して似たような思いの方との経験を共有できることはそのひとつだと感じています。
これを手に入れたときのように、「やらずに後悔するよりやってみて後悔」ということだと思います。本当に合わないと思ったら登録を解除したっていいんですから。いまのところ、後悔はないですよ。
個人間でカーシェアを行うサービス「Anyca(エニカ)」。クルマを所有しているオーナーは、エニカに登録することで、仕事中を含めた自分が愛車の乗らない時間帯に他の人が使用できるようになります。その対価として収入が得られるだけでなく、少しでも愛車の維持費を抑えることができるのです。
ホークHF2000のオーナーであるtommyさんも、エニカを通じて出会った人と人との出会いや、ご自身が所有しているだけでは気がつかない、このクルマも新たな一面を垣間見ることができたのかもしれません。
[ライター/江上透 画像提供/Anyca]