テクノロジー
更新2018.04.11
日本でも展開開始したGoogle「Android Auto」は、Apple「CarPlay」より便利なのか
海老原 昭
Androidスマートフォンをカーナビに接続
Android Autoは、AndroidスマートフォンのうちOSのバージョンが5.0(Android Lollipop)以上の環境で利用できる。標準では機能が含まれていないので、Google Play StoreからAndroid Autoアプリをダウンロードして利用する。Android Autoは、Android Autoアプリをインストールしたスマートフォンと、Android Autoに対応したカーナビがセットで機能するもので、どんなカーナビでも利用できるわけではない。現状ではパナソニックの最新カーナビ「Strada CN F1D」か、日産の純正カーナビ「MM516D-L/W」(7月15日発売の最新モデル)、またはアウディ、フォルクスワーゲン、ホンダ、マセラティの各対応モデルの純正ナビゲーションシステムが対応済みだ。
▲対応カーナビ一番乗りのパナソニック「Strada CN F1D」
▲対応モデルリスト
Android Autoを使うメリットは、普段使っているスマートフォンのデータをそのまま車内でも使える点だ。たとえば乗車前にGoogle Mapで目的地を検索しておき、ナビゲーションをスタートしてから自動車に乗り込んでカーナビに接続すると、それまでの設定を引き継いでナビゲーションがスタートする。さらに目的地の近くにクルマを停めて降車したあとも、再び徒歩ナビに戻って目的地までナビゲーションしてくれる。ナビに使う地図そのものがインターネットで常時アップデートされるため、カーナビのように地図をディーラーで更新する必要もないわけだ。
また、現時点では音楽系アプリの一部だけだが、サードパーティ製アプリで機能を拡張できる点もメリットのひとつだ。例えば現在はインターネットから音楽を聴き放題のサービスがあるが、それらをラジオ代わりにかけたり、朗読アプリで運転しながら読書を進めることもできる。ただし、残念ながら地図アプリは標準のものから変更できない。カーナビには独自にアプリを追加できる機種もあるが、各社のナビ専用で汎用性がない。いつも使っているアプリの延長上として使えるAndroid Autoのほうがずっと便利だというわけだ。
▲音楽聴き放題サービス「AWA」がAndroid Autoに対応しており、標準サービスに加えて聴き放題も利用可能だ
Androidと双璧をなすiPhoneの場合、iOSはバージョン7.1から「CarPlay」というカーナビ接続機能を備えている。対応カーナビが必要なことや、アプリで拡張できるといった仕組みについてはAndroid Autoとほぼ同じものと考えていい。Android Autoより一足先に登場してはいたが、CarPlayの対応機種もまだ少ないため、ようやく両者がスタートラインについた、と言っていいレベルだ。
現時点では一長一短、両対応の機種が増えればようやく実用的に
Android Auto対応モデルの中でも、ホンダ・アコードハイブリッドに標準搭載された純正カーナビは、もともとCarPlay対応を謳ってきたモデルであり、Android Autoの登場で、日本初の両OS対応モデルということになった。今回、短い時間ではあるが、iPhoneとAndroidスマートフォンを両方接続して試せるチャンスがあったので、その感想をお伝えしよう。
▲今回テストしたアコードハイブリッド。個人的な話で失礼ながら、古いアコードの印象が強かったので、乗り心地のよさに驚いた
カーナビとの接続はUSBポートにiPhoneはLightningケーブル、AndroidはmicroUSBケーブルで接続するだけだ。あとは接続されたスマートフォンの種類を自動的にカーナビが判断し、モードを切り替えれば最適な表示が行われる。ここまでの手順で迷うことは、どちらを使っていてもほとんどないだろう。
▲iPhoneを接続すればCarPlay、Androidスマートフォンを接続すればAndroid Autoに切り替わる
走行中の文字入力は、どちらもステアリングのマイクスイッチを押して音声で行う。ただしここで気をつけねばならないのが、カーナビ自身も音声入力機能を持っているため、1回短く押すだけだとカーナビ本来の機能が呼び出されてしまう点。CarPlayの音声アシスタント「Siri」にせよ、Android AutoのGoogle音声入力にせよ、マイクスイッチを長押ししないと起動しない。さらに、音声入力が起動してから入力の待ち受け状態になるまで、わずかだがタイムラグがある。これは慣れるまでにちょっと混乱しそうだった。
▲ナビ自身の音声認識とスマートフォンの音声認識が競合してしまう部分があり、やや混乱する
地図そのものについてはGoogleマップが使えるAndroid Autoのほうが情報量も多く、使いやすい。特に走行中に「ガソリンスタンドに行きたい」などと伝えると、設定済みの目的地をキープしたまま、最寄りのガソリンスタンドをリストアップし、その中から選ぶと途中立ち寄り地点として登録してくれるのだ。これは同時に1つしか目的地を設定できないアップルのマップよりずっとカーナビ的で使いやすい。
▲Android Autoのマップはすでにカーナビとして十分実用的な範囲になっている
一方、アプリでの拡張は、一日の長があるCarPlayのほうが使いやすい。CarPlayでは拡張したアプリはホーム画面にアイコンが並び、Android Autoではオーディオアプリへの切り替え時に選択するという違いがあるのだが、どのアプリが対応しているかが一目でわかることや、実際に登録されたアプリの使い勝手の面で、CarPlayのほうが使いやすい、と思うシーンがいくつもあった。この辺りは慣れや対応アプリの改良で改善する部分もあるだろう。
▲CarPlay
▲Android
メジャーリーグの成績などを表示してくれる公式アプリ「MLB at Bat」では、CarPlayだと登録していないユーザーでも最新ニュースなどが確認できるのだが、Android Auto側では未登録のユーザーは何も機能が使えないようになっていた。
スマートフォンの2大OSがサポートしたことで、ようやく日本でも自動車メーカーやカーナビ各社が自動車とスマートフォンの接続に本腰を入れてくるようになる。今年はハイエンド機種、来年以降はミドルレンジまでこうした機能が降りてくると考えられており、純正ナビについても同様に広まってくるだろう。自分の使っている端末が対応しているかが気にかかるところだが、今回紹介したホンダの純正ナビのように、両対応してくる製品が増え、気にする必要がなくなるはずだ。わざわざその機能を求めてナビを交換する必要はないと思うが、新車の購入時、あるいはナビの機種変更の際には、スマートフォンとの接続機能にも注目してみてはいかがだろうか。
[ライター・写真/海老原昭]