更新2022.10.22
はたして「アメ車=壊れる」は日本人の妄想に過ぎないのか?
Mt.T
「アメ車って壊れるんでしょ?」
「アメ車は大変でしょ?」
なんてよく聞かれます。
アメ車に興味を持っている人からも・・・です。
■結論:アメ車は壊れないですよ!
そのときに私が答えるのは
「アメ車は壊れないですよ」
というフレーズです。
そうすると皆さん
「え?」
ってなりますね。
だって今まで常識で誰もが同じだと考えていたことがいきなり否定されるんですから。
「太陽は東から登って西に沈みますよね」っていったら「いいえ、北から登って南に沈みますよ」と答えられたくらいのインパクトかもしれません。もはやバカボンの世界です。
まあ、常識が覆されるというのは非常に大きなインパクトがありますね。
■アメリカのクルマが壊れるなんてのは、実は日本人の妄想に過ぎない?
でもですよ、そもそもなんでそんな常識が生まれたんでしょうか。
だって、アメ車ってただアメリカのメーカーが作った自動車ですよ。
初めて自動車を量産化したフォードだってアメ車ですよ。
アメリカでクルマ作ったら壊れるんですか?
飛行機なんてボーイングもエアバスもアメリカで作ってますよ。
アメリカで作ったから飛行機壊れますか?
アメリカで作っているアメリカのクルマが壊れるなんてのは、実は日本人の妄想に過ぎないんです。
アメリカって国土の面積は日本の26倍もあります。でも人口はわずかに3倍にも満たない国です。そんな国ですから、当然人口密度は日本とは比較にならないくらいに低いわけですね。そんな国の国産自動車が、ボコボコ壊れてたら、すぐに助けも来れないかもしれないし、場合によっては命にかかわるような状況にもなりかねません。
それこそ訴訟社会ともいわれるアメリカで壊れまくる自動車を販売していたら、メーカーは存続できない状況に追い込まれるのではないでしょうか。アメリカ発で日本でも人気のダイソンなんか全然壊れませんよね。iPhoneだって(まあ中身はアメリカ製ではなかったり組み立てはアジアだったりはしますけれども)。
先述のボーイングの飛行機だって、世界中を安全に人々を運んでいるわけですよね。
そんなことを考えてみたら「アメ車=壊れる」というのはそもそもおかしいんじゃないかと本来は気付けるはずなんですが、そもそも物心ついたときから「アメ車は壊れる」と刷り込まれているので考える余地もないわけです。海に行ったことがなくても海の水はしょっぱいと知っているくらいのレベルですよね。
■「なぜアメ車は壊れる」というイメージが定着してしまったのか?
じゃあどうして「アメ車=壊れる」になってしまったのでしょうか。
それを紐解くには並行輸入車というものを理解する必要があります。アメ車に限らず輸入車には正規輸入車と並行輸入車というものが存在します。今ではアパレルなんかも並行品なんかあるので違いはご存知と思いますが、一応ご説明いたします。
正規輸入車は、メーカーが販売権を委託した正規の代理店もしくはメーカーの日本法人が直接メーカーから新車で輸入をして、日本で販売をするクルマを指します。正規輸入車はすべて新車の状態で輸入されるのがポイントです。対して並行輸入車は、正規の輸入元以外が輸入して販売する輸入車のことを指します。この並行輸入車の中には新車の状態で日本へ輸入される新車並行車と、現地でしばらく走っていた中古車が日本へ輸入される中古並行車が存在します。基本的には新車並行車はクルマの状態としては正規輸入車と特に変わりません。日本向けに改善されるウィンカーやヘッドライトなどの仕様が異なったり、保証内容が違うなどがあるくらいでしょうか。
注意しなくてはいけないのが、中古並行車の存在です。中古車の状態で日本へ輸入されるクルマです。なぜ注意が必要かというと、アメリカは先程国土面積が日本の26倍とお伝えしました。つまり、日本よりも26倍たくさん走っている可能性があるわけです。まあ、時間的な制約があるので単純に26倍になることはあり得ませんが、少なくとも日本よりも走行距離は一般的に多くなる傾向にあります。ですから、中古車でも新車から1、2年落ちでも平気で10万マイルとか走ってることもあるんです。車種や年式によっては、20万マイルなんてクルマがあってもまったく不思議ではないんです。
(ちなみに、日本へクルマを買いに来る海外のバイヤーにとっては「10万kmはローマイレージ(低走行車)なクルマ」として、とても状態が良いと人気です!)
その10万マイル、20万マイル走行したクルマは、当然販売するにあたっては然るべき整備を施されるのが本来の姿ですが、そうなっていないのが中古並行車の真実でもあるのです。本来あってはならないのですが、どこかのタイミングで10万マイルが3万kmに改ざんされ、ボディーが人気色にリペイントされ、シートが張り替えられ、カーペットが交換され、見た目は新車同様の3万kmが作り出されます。これを日本で3万kmだと思って購入して、交換時期を超えた部品が次々と音を上げ始めたらどうなりますか?「アメ車=壊れる」ができあがりますよね。これが、アメ車が壊れるといわれ始めた真実です。
確かに、アメリカと日本では道路事情もまったく異なるため、想定外の使用により故障が出る可能性はありますが、それはアメ車に限ったことではありません。メルセデス・ベンツでもBMWでも、ロールスロイスでも、テスラでも、どんなメーカーのクルマでもあり得ることです。繰り返しますがアメ車に限った話ではありません。それなのに、なぜアメ車だけが「壊れる」イメージを持たれてしまったのには中古並行車の存在があったからなんです。どうして中古並行車があるのか?というと、安いからです。正規輸入の新車だと1000万円じゃないと買えないけれど、中古並行車なら300万円で乗れる。
そりゃあ、欲しい人、憧れてる人は飛びつきますよね。でも、そんなにうまい話があるわけがないんです。それなりの状態だからそれなりの金額で仕入れることができるわけで、仕入金額が安いから安く販売できるんです。1990年前後に特に多く並行車は存在していましたが、現在でも中古並行車は存在しています。悲しいかな、今でも稀に現地の記録と日本でのメーターの表示がまったく異なるクルマが見受けられます。
■まとめ「壊れないアメ車」とは?
しかし、中古並行車がすべて悪いというわけではありません。走行距離を改ざんし、本来の状態を隠して販売されている車両に問題があるということだけなんです。その点をしっかり開示して、必要な整備を施し、安心して乗ることのできる自動車を販売するのが、販売店の責務ではないでしょうか。それをないがしろにし、利益だけを追求しユーザーに責任を転嫁することがなされてきた結果が、「アメ車=壊れる」理論の生い立ちであったわけです。アメ車を購入される場合は、やはり信頼のおける販売店を見極めることが大切です。
今はSNSなどで様々な情報が取得できます。正しい情報も誤った情報も・・・です。それだけに、アメ車をこれから購入しようとお考えの方は、決して値段が安いからという理由だけでは飛びつかず、どんなお店で、どんな人が運営しているのか。実際に会ったり、電話で話したりしてしっかり質問に答えてくれるのか、信頼できそうな方なのかを判断するのが重要です。
クルマを前に舞い上がってしまうことは仕方ないですが、やはりクルマもお店もどちらかの選択が間違っているとそのあとのせっかくのアメ車ライフが楽しくなくなってしまいます。皆様のカーライフに少しでもお役に立てるように、クルマやお店選びでお悩みの方はぜひ当編集部にご相談ください。私達の経験が一助となれば幸いです。
●お問い合わせ先
https://www.currentmotor.co.jp/contact/
[画像/DODGE、AdobeStock ライター/Mr.T]