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更新2020.08.24

空冷ポルシェ911の価格高騰、その背景を964RSから紐解く

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松村 透

いまや、周知の事実となった「ここ数年で、一気に空冷ポルシェ911の相場が上がった」という話題。そこで、ポルシェ買取専門店も運営するカレントグループにヒアリングし、CL編集部では独自の調査を行ってみました。

「気づけば、限定モデルの多くが新車以上の価格に?」

その一例として、ポルシェ911カレラRS(以下、964RS)を取りあげてみたいと思います。964RSが日本で発売されたのは、1992年のことでした。総生産台数の約10%にあたる、230台前後が正規輸入されたといわれています。

一時はかなりの数が日本に生息していた964RS


希少モデルである911SC-RS(生産台数20台)を別にすれば、実質的に1973年カレラRS2.7(以下、ナナサンカレラ)以来の復活となります。発売の前年にあたる1991年の東京モーターショーにも出品されていましたし、日本でも瞬く間に完売となりました(1992年モデルのプライスリストにも、964RSのベーシック/ツーリングモデルの価格が記載されていました。しかし、すぐに完売となってしまったため、ほとんど意味をなさなかったようです)。

その後、新車/中古問わず、いわゆる「並行モノ」の964RSが日本に上陸を果たします。一時はかなりの数が日本に生息していたはずです。そのなかには、海外のレース用に造られた個体を、ある輸入車販売店がまとめて仕入れて販売したり、ポルシェ自らが手を加えた「ワークスチューン」と呼ばれるRSも含まれます。その後、993、996、997、991へとモデルチェンジを重ねていっても、一向に964RSの人気は衰えることがありませんでした。



これは筆者の感覚値ですが、この20数年間、964RSは常に高い人気を保っていたことは確かです。それでも、中古車の価格が正規モノの新車のそれを上回ることは、ホンの数年前までは考えられないことでした。

しかし、海外のオークションで「ナナサンカレラが高値で落札された」と報道されたあたりから状況が変わっていきます。それが2011〜2012年あたりでしょうか。

そして2013年に、911は誕生から50年を迎えます。ナナサンカレラに呼応するかのように、まず限定モデルやターボの相場が上がりはじめます。そして、その勢いは空冷911全体へと波及していきます。

「日本のポルシェは程度が良い」という評判が海外のバイヤーにも伝わり、日本にある911を買い漁っていきます。正規モノの964ターボ3.6は元々の数が少ない(80台弱)とはいえ、数年前までは割と見かける機会の多かった、3.3リッターターボの数がめっきり減った理由のひとつがまさにこれです。

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希少価値がでてくると、欲しくなるのが人間の心理


少ないパイ(程度の良い空冷911)を巡り、さまざまな思惑が絡み始め、多くの販売店の価格が「ASK」表示に変わっていきました。実際に価格を問い合わせてみると、想像を絶する価格に驚かされる…ということも珍しくなくなりました。こうなると、かつてのバブルのときと同じ現象です。



では、この状況はいつまで続くのか?これも感覚値ですが、空冷911の現状と今後について、集めた情報を基に仮説を立ててみました。

●日本国内の相場は、これでほぼ高止まりか?
●海外からの需要が一息ついたときが相場の分かれ道
●店頭から、ASKの表示が減ってきたときが相場の分かれ道
●いずれ相場が落ちたとしても、完全に元には戻らない可能性が高い

真面目に、一生懸命仕事をしていれば、何とか手が届きそうな存在…。飲みに行く回数を減らしたり、ランチ代を切り詰めたり…。それでも何とか手に入れたい。少し前までの空冷ポルシェ911は、多くのオーナー予備軍にとって仕事や人生における大事なモチベーションだったはず。すでにオーナーの方も、長年憧れてようやく手に入れた…そんな方も少なくないでしょう。それだけに、クルマへの愛着も人一倍かもしれません。

手放す理由はどうあれ、次のオーナーさんにも大切に乗って欲しいし、少しでも高く買取して欲しいのが本音ではないでしょうか?ここで売却時にガイドとなる情報もまとめてみました。

ポルシェ911は、中古車市場でも人気なのはご存知のとおり


クルマ好きはもちろん、そうでない人でも「ポルシェ」と言う響きがクルマの名前であることは知っているはず。いまや、新車でポルシェ911を買おうとすると、オプションや諸費用込みで1,500万円くらいになってしまいます。つまり、高嶺の花なのです。

新車は買えないけれど、中古車なら手が届くかもしれない…そう思う人が多いほど人気がある=中古車の相場は上がり、買取額もあがります。

では、なぜそれほど人気があるのか?スーパーカー世代なら、小さい頃から憧れ続けていて、大人になってもいつかは手に入れたいと思っている方は少なくないはず。ポルシェのラインナップも、カイエンやボクスターなど、様々なモデルが販売されていますが「ポルシェ=911」であることはいつの時代も変わらないのです。

911はポルシェにとっても象徴と言える存在。それはつまり、高いステータスも併せ持つ、希有な存在といえるのです。



ズバリ、ポルシェ911の中古車って高いのか?これはモデルにもよりますが、1964年〜1997年までに生産された「空冷911」といわれるモデルは、その多くが新車当時か、それ以上の相場で取り引きされています。一方、1998年から現在まで生産されている「水冷911」は、どちらかと言うと適正価格に近いといえそうです。

記事の前半で書かせていただきましたが、空冷911の価格高騰は世界レベルでの話しです。日本に生息する「空冷911」は、走行距離が少なく、程度良好な個体が多いために海外のバイヤーからも注目されています。しかし、日本はもとより世界中の相場が高騰しており、もはや高止まりの状態。ただ筆者の独断では、ここ1,2年かもっと早いタイミングで買取相場が落ちるのではないかと予想しています。

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ポルシェ911の売り時はいつなのでしょうか?


少し前に「いつなの?今でしょ!」のフレーズが流行りましたが、もし手放すしかない状況であれば、まさに手放すタイミング「今」だかもしれません。空冷911の買取ならなおさらです。

水冷911は少し状況が異なりますが、何らかの余波を受けることは充分に考えられます。ターボや限定モデルなどの希少価値が高いモデルほど、余波を受ける確率が高いといえるでしょう。

ポルシェ911を高く買取してもらうためには、「日常的にポルシェ911の買取査定をこなしている店舗や査定員であること」ではないでしょうか。50年以上にもおよぶ生産期間の間に、ポルシェ911には様々なバリエーションが誕生しました。



普段、日本車に乗っている方が急に輸入車を運転すると、ワイパーとウインカーの操作を間違えてしまうことがあります。買取店にも、日本車に強い店舗と輸入車に強い買取店舗があります。そこを見極めることが重要なカギとなってきます。

彼らはポルシェ911の価値を理解していますから、何とかプラス査定するポイントを探り出してくれるに違いありません。プラス査定の大事な要因となる、限定モデルや人気モデルなどの特徴にも精通しています。さらに、オーナーが大事に乗ってきたことを汲み取ってくれるなら言うことなしです。

これは私見となりますが、よくある一括査定は、メーカーやモデルによっては有効な手段と言えますが、ポルシェ911を売却する際には当てはまらないと考えておいた方が良いでしょう。その理由として、どちらかと言うと国産車が強い分、輸入車、特にポルシェ911のような特殊なモデルでの買取査定経験やノウハウが圧倒的に不足しているからです。

もはや簡単には手の届かない存在となってしまった空冷ポルシェ。本当に欲しいひとのところに。本当に大事にしてくれるオーナーのところに。少しでも早く、適正価格に戻ってもらうことを節に願います。

[ライター/江上透 画像提供/ガレージカレント]

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