メンテナンス
更新2016.10.13
外気に含まれる汚れはこんなに多い…エアコンフィルターは定期的に交換するべきか?
高山 則政
家庭用エアコンと違って、クルマは外を走るので様々な物質が入ってきます。説明の前に、エアコンの空気の流れをおさらいしましょう。
エアコンの空気の流れについて
普通のエアコンでは、外気導入と内気循環の2つのエア導入通路があります。どちらも読んで字のごとくで、クルマの外から空気を取り入れるのが外気導入。車内の空気を循環させるのが内気循環です。クルマによっては車外の空気の汚れを判定して自動で切り替えたり、外気と内気のイイトコ取りをするためにミックスしたりする場合もあります。それぞれの特徴ですが、外気だと酸素濃度が通常のフレッシュな空気が取り入れられるメリットがありますが、外の汚れた空気を吸うこともあります。内気だと外の汚れた空気は遮断できるものの、クーラー(エアコン)を使わないと湿気がこもって窓が曇ったり、酸素濃度が少しさがって二酸化炭素濃度が若干上がり、臭いもこもりやすくなります。
▲新品のエアコンフィルターの例(BMW E46)
外気に含まれる汚れや異物には、排ガス、PM2.5のような粒子状物質、砂やホコリ、葉っぱ、花粉、種子、虫、鳥の羽、臭い、ウイルス、バクテリア、アレルゲン、地域により火山灰などがあります。内気でも、タバコの煙、髪の毛、衣類のホコリ、シートやカーペットの内装から出るホコリやダニ、ペットの毛などがあります。
エアコンフィルターにはそのような不快な物質を取り除いて、快適な空気を作り出す機能があります。大抵のクルマは、外気導入はワイパーの下辺り、内気循環はグローブボックス裏から行い、双方からのエア通路が合流した後にフィルターがあります。しかし、輸入車では外気導入部にしかフィルターがないのもあります。設置場所も、国産車ですとグローブボックス裏やダッシュボード下中央付近にあるものが大半ですが、輸入車ではボンネットを開け、エンジンルーム側から行うものもあります。
エアコンフィルターの定期点検や交換の目安
▲長らく換えてなかったフィルターを交換。このクルマでは、エンジンルーム内にフィルターケースがあり、そこのフタを外して交換。作業自体は簡単。
定期点検や交換の目安は、例えばトヨタ・ノア/ヴォクシーの取扱説明書によると2万km、大都市や粉塵の多い地域で1万kmごとと記載されています。この辺は、車種にもよって違ってくるのですが、期間にすると概ね1年〜1年半、引っ張っても2年を目安に交換すべきだと思います。当然、何年経とうと走らなければそんなに汚れないのですが、少なくとも点検はやって欲しいと思います。
▲外したフィルターはものすごい汚れ。もともと活性炭入りで黒っぽいが、完全に真っ黒で大きめのゴミが多数キャッチされている。
以前、エアコンフィルターの取材をするために、10件ほどクルマ屋を訪問して交換で外されたフィルターを見せてもらったことがありますが、サービスの方曰く、フィルターの存在自体を知らないユーザーが多く、そのような場合、「エアコンの風が出なくなった・・・」という症状で持ち込まれて初めてフィルター交換が実施されることもあるそうです。そうなると5年以上使われたと思われますが、そりゃまあヒドいもんで、大げさに言えばエアコンを動かしている時は掃除機の排気を吸っている状態になります。清潔好きな人でも、見えなければ・・・意識しなければ何ともないのかもしれませんね。
さらに、エアコンフィルターは乗員だけでなく、エアコンパーツの保護機能もあります。それはエバポレーターという冷却器へのホコリの付着防止です。エバポレーターにホコリが溜まると、作動時の結露水がジトッと付いたままとなり、腐食して穴開きなどの故障に発展しやすくなります。もちろん、エバポレーターにホコリが溜まると送風性能も低下しますが、これを掃除したり交換するとなると大変な手間と工賃が必要になります。
▲葉っぱの破片、鳥の羽、虫などが付着。ここを通った空気を吸っているとは・・・
エアコンフィルターは純正品の他、アフターマーケット品もある
エアコンフィルターのメンテナンスで障壁となるのは、見えないところに付いていて、意識されないということでしょう。まずはオーナーズマニュアル(取扱説明書)を見て、エアコンフィルターの項目を見てもらうが良いでしょう。ユーザー自身が交換できるものなら、交換法が載っている事が多いです。「販売店にご相談ください」と書いてある場合、工具が必要だったり場所が狭かったりすることがあります。簡単なものは3分でできますが、込み入ったものでは1時間以上かかることがあります。
▲国産車(トヨタ・シエンタ)の例。グローブボックスを外すと、エアコンユニットが現れて、そこのフタを外せば交換できる。
エアコンフィルターは純正品の他、アフターマーケット品でも多く出回っていて、安価なものから様々な機能が付いたものがあります。安価(1500円程度)なものの中には、純正品より薄いろ紙の場合もあり、必要最小限のゴミ取り性能で微粒子や臭いは取れません。高級品(5000円以上)になると、ろ紙が3層などになっていてPM2.5といった微粒子の除去性能が高く、消臭用の活性炭の量も多い上に、抗菌、抗アレル物質などの機能も満載です。中位グレード(3000円前後)では、各種機能のほかビタミンC誘導体による美肌効果を謳うものもあります。この辺は、予算と好みで選んでいただければと思います。フィルター選びで難しいのは、ろ過性能が高性能になるとフィルターの通気抵抗が増えて、風量が若干低下する場合があることです。暑がりな人は薄めのフィルターを選んで風量を重視したほうが良いかもしれません。なお、消臭用の活性炭やビタミンC誘導体を付加しているフィルターは1万5千km、1年ごとの交換がオススメです。
▲フィルターを取り出したところ。トヨタらしく、ダッシュボードの一部に切り欠きがあり、フィルター交換時に引っかからないようになっている。工具不要で数分で交換可能。
なお、ハイエースなどの商用車ではエアコンフィルターが標準で付かない場合があります。このような場合でも取り付け枠があるので、取り付けることをオススメします。