アイキャッチ画像
ライフスタイル

更新2023.05.20

荷物置き場と割り切るべき?オーナー目線で「愛すべき2+2」について考えてみた

ライター画像

林 哲也

私が所有するアウディ・初代TTは4シーター。車検証上では、4人が乗車できるクルマとして登録されています。しかし実際には、初代TTで大人4人が移動するのはかなり困難。足元のスペースはほとんどないし、頭もルーフに閊えてしまいます。そんな“形式上の4座”、割り切って使えばなかなか便利だし、その恩恵を受けることも多々あるはず。今回のテーマは、「愛すべき2+2」。“2+2”クーペのユーティリティについて考えてみたいと思います。



■輸入車の4座クーペ、どんな車種が魅力的?


中古車検索サイトで「輸入車」「クーペ」「4人乗り」という条件で検索してみると、想像よりたくさんの車種がヒットしました。ドイツ車でいうと、メルセデス・ベンツのCクラスクーペやEクラスクーペ、Sクラスクーペなど。過去にはCLやCLKというモデルもありましたね。BMWでいうと、1・2・3・4・6シリーズクーペ、そして8シリーズなどが選択肢に入ってきます。そしてアウディは、TTクーペとA5が主たる4座クーペです。そしてポルシェ911も、伝統的な2+2クーペの代表格のひとつといえるでしょう。


フランス車では、4座クーペを過去に多くラインナップしていたのはプジョー。406クーペやクーペ407、そしてRCZなどがその例です。イタリア車にも多くの選択肢があり、例えばアルファ ロメオはGTV・GT・ブレラなどがありました。マセラティの3200GTやグラントゥーリズモも魅力的。フェラーリも456Mや612スカリエッティ、そしてローマなど、古くから多くの2+2をラインナップしてきたことが窺えます。イギリス車で代表的なのはジャガー・XKやロータス・エヴォーラでしょうか。アストンマーチンも、DB7やDB9、そしてDB11と、古くから2+2を造り続けてきた由緒あるメーカーのひとつですね。ベントレー・コンチネンタルなども素敵です。そして意外にも(?)選択肢が多いのがアメリカ車。フォード・マスタングやシボレー・カマロ、そしてダッジ・チャレンジャーなど、ビーチ沿いを疾走するのにピッタリな4座クーペがラインナップしています。


ここまでたくさんの車種をリストアップしてきましたが、同じ4座クーペでも、メーカーによってクルマの成り立ちが大きく異なっている点は興味深いです。ドイツの各社のクーペはセダン・ボディをベースとしたクーペが非常に多いのに対して、イタリア車やイギリス車をはじめとする多くのメーカーは、クーペ・カブリオレ専用のボディ設計が主流のようです。たくさんの自動車大国・ドイツのメーカーは、ひとつのモデルに多くのボディタイプを設定していることが窺えますね。そして先ほど列挙した4座クーペのほとんどのモデルが、クーペだけではなくカブリオレ(オープンカー)も設定しています。



外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー

■実際問題「2+2」って使いものになるの?


4座クーペを日常使いするうえで、非常に重要となるのが「後席が使いものになるのか」という問題。私が普段触れているアウディ・初代TTを起点として考えてみます。


少し話を脱線させて、ウンチクを語ります。初代TTは後席にヒトが快適に座ることなんてとてもじゃないけど無理なパッケージングです。それにも関わらず、そのデザインはちゃっかり「2+2であることをアピールする」ものなのです。1995年のフランクフルト・ショーでデビューしたTTのショーモデルは、量産版のTTとほぼ変わらないデザインをしていました。唯一大きく異なっているのは、サイドウィンドウの処理。ショーモデルには、Cピラーの部分にウィンドウはなく、ドアの部分のみウィンドウがあるのが特徴です。対して、量産モデルのTTは、Cピラーに小さいウィンドウが嵌め込まれています。これは“ホモろげーション・ウィンドウ”と呼ばれるものなのですが、まさに「2+2であることをアピールしやすい」という理由で採用されたものなのです。



…ウンチクが少々長くなってしまいました。アウディが胸を張って市場に送り出した2+2こと初代TTのリアシートですが、実際は先述の通り、とても成人男性(に限らず、成人女性も)がドライブを楽しめるような空間ではありません。エマージェンシーだとしても乗りたくないレベルで狭いのです。身長166㎝と小柄な私のドライビング・ポジションに合わせて、初代TTのリアシートに座ってみます。前席のシートバックが目前に迫るレッグ・スペースは、体重48㎏の細身な私の腿がギリギリねじ込めるくらいの幅しかなく、足元は私の靴(25㎝)すら縦向きでは入らず、横向きに並べるしかありません。必然的に“ガニ股”で座ることを余儀なくされるうえに、なだらかに下降するルーフラインにヘッド・スペースは侵略され、頭上が狭いどころか、首を傾けないと満足に乗車することすら許されません。現実的に考えて、初代TTのリアシートでドライブを楽しむことができるのは、チャイルドシートに乗った小さな子どもに限られると思います。…もしくは、マゾヒスト気質のある方でしょう。


■同じ4座クーペでも、車種によってけっこう違う


私がリアシートに腰かけたことがある4座クーペは、初代TTの他には、ポルシェ911(タイプ996)とプジョー クーペ407、そしてBMW 1シリーズクーペ。もっとも“普通に乗れる”のはクーペ407です。足元も広く、頭上もそれなりに空間があった記憶があります。407だったら、大人4人でちょっとしたドライブ旅行を楽しむことができそうでした。そして次点は1シリーズクーペ。サイドフォルムが2ドアセダン的なこのクルマ、頭上スペースに優れていた記憶があります。足元も比較的スペースがあり、3時間くらいの移動であれば不満なく乗れるな、といったかんじでした。そして911、このクルマは「ギリギリ乗りたくない」レベルです。初代TTよりは遥かにマシ。なだらかなルーフラインのお陰で、頭上スペースはしっかりと狭められている印象こそありましたが、初代TTよりも足元のスペースがきちんと確保されているのは感心するポイントでした。


さて、先述の3台(と、所有する初代TT)のホイールベースを比べてみましょう。もっとも快適だったプジョー・クーペ407は2725㎜、次点のBMW・1シリーズクーペは2660㎜、そしてポルシェ・911(タイプ996)は2350㎜。初代TTは2425㎜です。全体的に見てみると、やはりホイールベースが長い4座クーペの方が、リアシートの足元スペースが確保されている傾向があるように感じます。その一方で、初代TTとポルシェ・911はレッグ・スペースの逆転現象が起きているのが興味深いポイントです。その理由として推測されるのが、パッケージングの差。初代TT(ホイールベース2425㎜)の全長は4060㎜で、ポルシェ・911(ホイールベース2350㎜)の全長は4430㎜です。


すなわち、911はTTよりも前後のオーバーハングが大きいということになります。911の長いリアオーバーハングには、伝統的なRR駆動方式に則って水平対向エンジンが載せられています。リア車軸の直前までは、しっかりと乗員スペースが確保されているのが特徴的です。対して、TTはリアオーバーハングがとても短い点が特徴的。トランク・スペースを確保するために、リア車軸の少し手前にリアシートが設置されています。FFベースのパッケージングでしっかりと荷室を確保したクーペを作り出そうとした結果、後席の乗員が大きな犠牲を被ったことは明らかでしょう。



外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー


■リアシートがあることで得られた恩恵に感謝しよう


ここまで私の愛車こと初代TTのリアシートが使いものにならない、と散々にこき下ろしてきました。その一方で、「リアシートにヒトを乗せない」と割り切ってしまえば、結構便利に使えるのが2+2クーペの魅力。前席から手が届きやすいリアシート、ちょっとした荷物を置くのに非常に便利。ドライブの時に持っていくトートバッグやカメラ、そして上着なんかも、ポイッと後席に投げ入れてしまえるのは便利なポイントです(そして取り出しやすい点も魅力的)。「ちょっとした収納スペースの余裕」と捉えれば、2+2クーペは1人か2人の快適な移動に適した乗りもの。デザインと実用性の両立といったところでしょう。


そして、リアシートが可倒式でラゲッジスペースと繋がっている(もしくはトランクスルー機能を有している)車種は、荷室の拡大にリアシート部分が大きく寄与するのです。長尺物を積載したい場合、2座クーペでは、荷室拡大には限界があるでしょう。4座クーペの場合、必要に応じてリアシート部分を倒してしまえば、それなりに広い空間が生まれます。私の初代TTの場合、ゴルフバッグはもちろん積載可能ですし、スノーボード(150cm)が斜め刺しでギリギリ積めます。さらには、前輪を外してしまえば、自転車(ピストバイク)も積載できました。クーペの美しいルーフラインと、生活を豊かにする実用性を両立したい方にとっては、初代TTをはじめとした2+2クーペはとても魅力的でしょう。



ホイールベースの長さやパッケージング、そしてリアシートが可倒か否かで、ユーティリティが大きく変化する4座クーペ。同じ2+2でも、その使われ方はクルマによってさまざまです。しかしながら、その“+2の少しの余裕”が、オーナーの暮らしを少しだけ便利に、豊かにしていることは間違いがありません。美しく余裕があり豊かな2+2クーペ、ご自身のライフスタイルに添うようなとっておきの1台を探してみてはいかがでしょうか。


[撮影&ライター/林哲也]

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています
輸入車に特化して20年以上のノウハウがあり、輸入車の年間査定申込数20,000件以上と実績も豊富で、多くの輸入車オーナーに選ばれています!最短当日、無料で専門スタッフが出張査定にお伺いします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。