更新2021.07.24
大人のクルマ好きがそろそろ考えたい、「持続可能なオフ会」のあるべき姿とは?
野鶴 美和
一刻も早くコロナ禍が去り、オフ会で気兼ねなく親睦を深められることを、多くのクルマ好きが願っていると思います。
近年では、オフ会で愛車を並べて撮影し、SNSにアップして繋がりを得ることを「コラボ」と呼ぶようです。さらに、車種やジャンルを限定しない「オールジャンル」のオフ会も増えました。境界がなくなり、クルマが本当の意味で「コミュニケーションの道具」として進化を遂げているのでしょうか?EV化をはじめ自動車業界が多様に変化するなか、オフ会はカーライフを充実させる重要なイベントであり続けてほしいものです。
「無断オフ会はダメ」とただ訴えても伝わらない?
しかし、依然として私有地や公共施設の駐車場を占拠する「無断オフ会」は存在し続けていています。「会場の使用許可を得て、マナーも守っていたのに通報されてしまった」という話を耳にしたこともあります。一部の影響で、善良なオフ会が肩身の狭い思いをする現状もあるようです。
人は集団になると、罪悪感が薄れるといいます。「みんなやってるから」「悪いのは始めた人だから」と、本人たちが気づかずにマナー違反を平然と行ってしまうのが集団心理の怖さです。そうならないように、運営がしっかりと舵を取らなくてはなりません。しかし「無断オフ会はダメだ」と風紀委員のように訴え続けても伝わりにくい、とも思います。
オフ会運営のベテランに聞く
そこで今回は、オフ会のベテラン運営者にお話を伺い、場所を借りて得られることを“メリット”としてお伝えすることにしました。とくに「どのような場所をどうやって借りているか」にご注目ください。
『丁寧な開催準備が、良いつながりを生む』
倉敷旧車倶楽部 別府彰さん
▲年に一度のイベントは観光施設の駐車場を借りて開催。県外からの参加もある
──どんなオフ会を主催していらっしゃいますか?
当倶楽部は、観光施設の一角の「広場」をお借りして、月に一度の「定例会」と、より規模の大きなイベントを年に一度開催しています。
お借りしている施設のご縁で商工会議所の方ともつながりができ、地域のイベントに呼んでいただく機会が増えました。旧車の展示や商店街のパレードランを行っています。
──開催する際に注意していることはどんなことですか?
規模の大きなイベントを行う前は、近隣住民の方々へ必ずご挨拶をしています。また、周辺への影響を考慮して不法改造車の参加はお断りしています。
それから、ホームページやSNSでの告知は基本的にしていません。台数が極端に増えるとトラブルにつながるからです。
──スムーズに会場を借りられるコツはありますか?
会場をお借りするときは、事前に現地まで足を運びます。駐車場等を確認してから、台数や開催時間などをできる限り具体的にまとめた概要を、お借りする場所の管理者にお伝えしています。
また、倶楽部の年間活動計画を作っています。こうすれば会員が予定を把握できますし、県外から参加する方の予定も立てやすくなります。あらゆる面で進行がスムーズです。
▲地域のイベントでパレードランを行うことも
『SNSを使わず紹介制にすることで、善良な参加者を増やす』
360cc旧車イベント主催 Kさん
会場として展望台の観光駐車場を借りている[写真提供/Kさん]
──どんなオフ会を主催していらっしゃいますか
旧車や360ccのクルマを中心としたミーティングを主催しています。
──会場の使用許可は、どうやって取っていますか?
「使用許可を得る」というよりも、開催したい場所があった場合、その場所の管理者に使用可能かどうかを尋ねるようにしています。
よくお借りしている観光展望台の駐車場は、市の観光課に使用する旨を伝えてはいますが、厳密にいうと使用許可は得ていません。基本的に「使用許可を出す」ということは「責任を負う」という意味になります。ですから、市が使用許可を出すことはありません。こちらの「自己責任」となります。
──参加者の迷惑行為を防ぐために対策をされていますか?
一見の参加車輌が極力来ないよう、メディアに取り上げられないようにしています。 SNSを使っての告知もしていません。常連参加者からの紹介のみで参加車輌を集めています。よって、これまでマナー違反をする参加者を見たことはないですね。
▲名車たちが集い、穏やかな時間が流れる[写真提供/Kさん]
『市の施設“農道空港”を貸切に。持続性あるイベントを育む』
ジムカーナイベント主催 牧野芳和(マッキー)さん
▲運営スタッフ本部[写真提供/牧野芳和さん]
──どんなオフ会を主催していらっしゃいますか?
「ジムカーナ+0-200」という、ジムカーナを楽しみながら親睦を深めるイベントを開催しています。初回開催は10年以上前なのでブランクがありますが、通算10回目を迎えます。今年の10月で再開してからは3回目となります。
車種は不問で、気軽にスポーツ走行を楽しめるイベントです。クルマを通じて長年交流のある仲間も多く参加していますが「はじめまして」の方にも居心地のよいアットホームな会場作りを心がけていますね。
──場所を借りて開催することで得られるメリットを教えてください
会場は「農道空港」を1日お借りして開催していますが、貸切なので安心して利用できます。敷地も広大なので、台数が多少増えても安心なんです(約30台まで)。
参加者のみなさんには、ジムカーナと0-200走行で約5000円、0-200のみ走行は約2000円の参加費をいただいています。市の所有施設ということもあって、利用料金も良心的ですよ。
──開催するうえで心がけていることはどんなことですか?
なにより無事故で開催すること。場内の安全を徹底することはもちろん、会場への行き来も安全運転をお願いしています。
また、会場内ではごみの分別・管理の徹底も心がけていますね。最後は全員で掃除も行いますが、そのおかげか今までマナー違反をしたり、モラルのない参加者がいたことはないです。
運営スタッフと参加者全員で「このイベントを作っている」という意識が生まれているのではとも感じていますね。毎回、参加者以外にも多くの仲間が見学に来て設営・タイム計測・片付けまで手伝ってくれるんです。必然と連帯感が高まっていると思います。
▲滑走路にコースを作ってジムカーナと0-200を実施。運営スタッフも走行も楽しんでいる
[写真提供/牧野芳和さん]
2021年10月30日開催予定「ジムカーナ+0-200」参加表明BBS
まとめ:オフ会を持続可能なものとするために
オフ会を開くにおいて、会場の使用許可を得ることは基本であり、入念な準備なくして成り立たないと思います。丁寧に開催されているオフ会に参加すると、やはり安心感がありますし、漂っているムードも穏やかです。
準備に手間はかかりますが“大人のクルマ好き”として、オフ会の準備も含めて楽しめるマインドが持てることって素敵なことだと思いませんか?サスティナブルの潮流「SDGs」ではありませんが、この先1つでも多く「持続可能なオフ会」が増えていけばと、筆者もいちクルマ好きとして願います。
【ライター・カメラ/野鶴 美和】