ドイツ現地レポ
更新2018.10.11
およそ20年の時を経て復活!発表当時誰もが待ち望んだフルオープンモデル、ポルシェ911カレラ3.2 カブリオレ
守屋 健
今回ご紹介するのは、幌を閉じた状態ではありましたが、現在でも日本人のみならずドイツ人にとっても憧れのフルオープン・スポーツカー、ポルシェ911カレラ3.2 カブリオレです。
古くは356の時代から
ポルシェのオープンエア・ドライブについてのこだわりは相当なもので、2018年10月現在のラインナップを見てもそれは明らかです。718ボクスターはもちろん、911にいたってはカレラ、カレラS、カレラ4、カレラ4S、カレラGTS、カレラ4 GTS、ターボ、ターボSにカブリオレ・モデルを設定。また、タルガ・モデルとしてタルガ4、タルガ4S、タルガ4 GTSが用意されています。他のメーカーとは比べものにならないほど、オープンエアを楽しむための選択肢が数多く用意されているのです。
歴史をたどると、ポルシェ最初の市販車・356にも比較的初期からオープントップ・モデルが用意されていました。プリAと呼ばれる1950年代半ばから、カブリオレやスピードスターといったモデルをラインナップ。その後もコンバーチブルDを発表、のちにロードスターにバトンタッチします。結局、356は1965年に生産を終了するまで、オープントップ・モデルをラインナップから外すことはありませんでした。ところが、1964年に登場した後継車・911には、しばらくオープントップ・モデルの設定はありませんでした。1967年にタルガ・モデルは発表されるものの、カブリオレに関しては1983年の復活まで、およそ20年という長い時間を待たなければならなかったのです。
およそ20年の時を経て復活したカブリオレ
今回撮影した911カレラ3.2 カブリオレは、リアのトランクリッド上のロゴが「Carrera」となっていることや、すでに「Hナンバー」を取得していることから、1984年から1988年の間に生産された個体と考えられます。本国仕様で231hpを発生する3.2リッター水平対向6気筒エンジンは、もちろんリアに搭載。ドイツで見かける古いポルシェは、総じてコンディション良好な個体が多いですが、この個体も例に漏れず非常に良い状態を保っていました。
カブリオレの復活を待ち望んでいたのは、ポルシェ・ファンだけではなく、ポルシェの社内にも数多くいたのかもしれません。ポルシェ356の設計者であり、フェルディナント・ポルシェの長男であるフェリー・ポルシェも、911カレラ3.2 カブリオレのスポルトマチック(セミオートマチック)仕様をプライベートで愛用していた、と伝えられています。1988年には、ついに911ターボにもタルガとカブリオレが選択できるようになりました。そして、後継車・タイプ964にバトンタッチする直前の1988〜1989年に、スピードスターが2,102台のみ限定生産され(台数については諸説あり)、タイプ930はその歴史に幕を下ろすことになるのです。
生産総数の70パーセント以上が今も現役
空冷911の価格高騰が伝えられて久しいですが、2018年現在、ドイツにおける930型(自然吸気エンジンモデル)の価格はおよそ5万〜8万ユーロ(650万〜1,040万円)で推移しています。ドイツの中古車検索サイトを見る限り、登録車数もかなり多く、現在も活発な取引が行われているようです。優れた走行性能と高い実用性を兼ね備え、ムダのない美しいエクステリアと愛嬌のある顔立ちを持つ911は、ドイツの人々にとってスポーツカーの歴史的アイコンであり、今後もそれは変わっていくことはないでしょう。
2017年に累計生産台数100万台を達成し、さらに生産総数の70パーセント以上が走行可能な状態で現存していると言われるポルシェ911。次期型の登場も間近と言われていますが、古いモデルについてもこれからも変わらず、長く愛されていくに違いありません。
[ライター・カメラ/守屋健]