
中古車の魅力
更新2019.04.24
あの頃のヤング御用達、トヨタ・1300スターレットDX
外車王SOKEN編集部
コンパクトカー最後のFR?ボーイズレーサー・1300スターレットの魅力とは?

もう40年以上も前ですが、マルイから1/24の自動車のプラモデルがシリーズで出ていました。ポルシェカレラRSRターボやシルエットフォーミュラのBMW、テキサコ・マルボロ・マクラーレンのF1など、その当時の空気感たっぷりなラインナップの中に、「トムス16バルブ・スターレットレーシング」が入っていました。
子供の目にも「こいつだけどうもスーパーカーじゃないな」という感じがしたのですが、でも何となくかっこよかったので買ってしまった記憶があります。

▲シンプルなメーターに後付けタコメーターが当時を思わせる
時代が下がって昭和60年。大阪の天神橋6丁目にあった某大学に入学した筆者は、ある日二年ダブりの同級生の運転するクルマで自宅まで送ってもらうことがありました。夜十時、キラキラとした街路灯に浮かび上がる長柄橋を渡りながら、
「このクルマって、なに?」
「かっとび」
そう、それは当時「かっとび」のキャッチコピーで売られていた、三代目のスターレットでした。こういう名前でクルマが売れた,今にして思えばいい時代だったのですね。当然マニュアルミッションで、免許を取って二年目のその同級生の、坂道発進の慣れたクラッチミートに感心しながら「やっぱりこういう良く走るクルマがほしいなあ」なんて考えてたのをわりと鮮明におぼえています。

▲1982年の後期型からポジションランプがヘッドライト外側についた
ということで今回ご紹介するのは、1982年式のトヨタ・スターレットDXです。DXというと「デラックスかな?」と思うかも知れませんが、ベースグレードです。スターレットとしては二代目、P6#型の後期型です。「1300スターレット」とも呼ばれていました。先述の同級生の「かっとび」はFFでしたが、この二代目まではFRです。
ちなみに初代スターレットはパブリカのスポーティバージョンで、デザインはなんとジウジアーロでした。
比較的最近の映画ですが「イニシエーション・ラブ」にも、このクルマが登場していますね。劇中車はドアミラーでしたが、このクルマが現役だった時代というのはちょうどフェンダーミラーからドアミラーに移り変わっていく頃だったんですね。

▲「DX」はデラックスではなくてベースグレードです
スターレットはトヨタとしては廉価なクラスのクルマでしたが、フロントにはディスクブレーキが装備され、またステアリングもラック&ピニオンでクイックレシオでした。動力性能も、72馬力(当時はグロス表示だったはずなので、実際には60馬力台?)のエンジンながら車重が730kgしかなかったので、そこそこ軽快な走りをしたものと想像されます。特に5速MTモデルはきっと楽しいクルマだったに違いありません。ナウなヤングはこれで峠を攻めたりしていたことでしょう。ちょっと羨ましいです。
また、このクルマはラリーやレースのベース車両として使われることもよくあったようで、スターレット・カップというワンメイクレースなども行われていました。
昭和56年にはパリ・ダカールラリーに参戦して、時間内ではないものの完走しています。この辺り、シンプルで軽量なこのクルマの強みだったかも知れません。まあ、この頃のパリ・ダカはベスパが出たりもしていましたから、今より若干競技性が薄かったというのもあるかも知れないですけどね。

▲ハッチバック・スタイルが国産車で流行した、その先駆けとも言えるリアのライン
最後に
スターレットは決していわゆる「高級車」ではありません。また、歴史に名を残す「名車」というのとも違うでしょう。尖ったところのない、ごくごくありふれた大衆車ですが、しかしだからこそ今となっては見かけないクルマです。もしかしたらトヨタ2000GTよりも見かけないかも知れません。
昭和の終わり頃の、見方によってはいろいろなものやことが今よりちょっと自由で混沌としていた、そんな空気を連れてきてくれそうな真っ赤なスターレット。あなたの青春時代へドライブしてみませんか?
[ライター/外車王編集部]