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イベント
更新2018.07.04
本物のファニーカー「ドラッグスター」展示も!第20回大人のミニチュアカー展をレポート
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鈴木 修一郎
一方で、熱心な愛好家による展示会や、ネット上の模型コミュニティの活動は活発になっているようにも感じます。久しぶりに隣町の個人商店の模型店に行くと、地元の模型サークルの展示会告知があったり、筆者が知らないだけで地元でもさまざまな模型サークルが活動しているようです。
地元のモデルカーショップ協賛のミニカー展示イベント
今回のイベントも、例によってカノカレかふぇにあった告知で知り、地元のモデルカーショップの協賛によるミニカー展示のイベントということでお邪魔してきました。
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会場となったのは愛知県豊川市の「ミニチュアワールドカフェ」(http://miniature-cafe.com)のイベントスペース。まさか県内にこんなお店があるとは知りませんでした。どうやら運営は住宅メーカーや土建関係企業向けの建築模型会社のようですが、鉄道模型のレイアウトの注文にも応じてくれるそうです。愛知県でも静岡に隣接している豊川市、豊橋市周辺になると、ミリタリーモデルメーカーのファインモールドや、RCカーメーカーのカワダ模型やイーグル模型もあり、製造業で有名な愛知県でも模型産業で有名な静岡の影響が出てるようにも感じます。
会場となる、ミニチュアワールドカフェに行くとさっそく店舗前には本物のファニーカーのドラッグスターが展示してありました。
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1/4マイル≒402mの直線区間を加速する事に特化しラジエーターは無し、5000馬力以上出ているそうです。
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地元のカスタムカービルダーのディゼマ ジャパン(https://www.desima.jp)の1960年代のACコブラをモチーフにしたカスタムカー、ベースはBMWZ4だそうです。(当初はてっきりマツダロードスターと勘違いしてました)
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電動トップを上げるとこの通り、デザイン的にもまったく違和感ありません。愛知県の東部はこうしたカスタムカーショップが点在するのが特徴です。
記念すべき第20回のテーマは黄色いクルマ
今回は20回目の開催とのことで、「黄色いクルマ」がテーマとなっていました。
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1/43スケールのポルシェ911のミニカーたちは黄色に統一されていますが、よく見ると奥に行くごとに年代が新しくなっています。
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年代ごとに少しずつディテールが変わっていくのがわかります。もちろん筆者はポルシェ911といえば空冷、やっぱりナローか930に限ります。
ところで、愛知県といえばトヨタの地元で有名なのですが、実はイタリア車愛好家が多いという土地柄で、愛知県内にもフィアット、アルファロメオのディーラーが点在し、ある意味イタリア車オーナーにはかなり恵まれた環境で、トヨタ関係者にもイタリア車好きや、通勤用のトヨタ車と別に趣味用にイタリア車を所有してる人が多いと聞きます。この展示会でも出展者の方がイタリア車について熱心に語っているのを目にしました。
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▲おそらくブラーゴのダイキャストモデルカーだと思いますが、アルファロメオスパイダーとアルファロメオ1750GS
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▲1/43スケールのフィアットX1/9
実は筆者が小学生の時従兄がこのクルマに乗っていて、何度か乗せてもらった記憶があります。生まれてはじめて乗った外車であり、ミッドシップ車で、このクルマのある伯父(=従兄)の家に行く時はこのクルマを見るのが楽しみでした。従兄がX1/9に乗っていたのは正味1年ほどで、乗せてもらった回数も数えるほどですが、今でも時折このクルマの事を思い出すことがあります。
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▲フェラーリ365GT(通称フェラーリ・デイトナ)
フェラーリと言えばROSSO(赤)ですが、やはりデイトナに関しては突き刺さるようなイエローでしょう。「黄色のクルマ」というテーマではデイトナイエロー抜きには始まらないという方も多いのではなでしょうか。
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▲ホンダビート
我らが国産車で「黄色」と言えばやっぱりこれですよね。
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▲トヨタセリカ1600GT
ご存知「ダルマセリカ」初期型のダルマセリカというと白かターコイズブルーかモスグリーンが有名ですが、黄色のセリカはちょっとマイナーかもしれません。
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▲イクソ クラリオン・キャメル スバルレガシィRS 1992年RACラリー
煙草広告の規制でレーシングカーやラリーカーから煙草メーカーのスポンサーロゴが消えて久しくなり、モデルカーでも、煙草メーカーのスポンサー時代のレーシングマシンは入手困難になりつつあるとも聞きます。
このクルマもよく見ると「CAMEL」が「CAME1st」になっています。当時、煙草広告の規制が入り始め、ステージによっては開催国の煙草広告の規制でロゴの差し替えが要請された時代の転換期であったことをしのばせます。
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▲1/24FJ40ランドクルーザー
出展者の方に話を聞く機会を逃してしまったため詳細はわからないのですが、海外のポリエステル製の完成品カーモデルのようです。趣味用のコレクションモデルというよりは玩具として作られた物でしょうか?40ランクルは日本よりもむしろ海外の人の方がなじみ深く、モデル化の対象になることが多いのかもしれません。
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▲フィアット126
1/24スケールのモデルカーで意外とありそうでないのがこういった「普通のクルマ」のカーモデルではないでしょうか。身近なクルマというのはなかなかモデルカーの対象にならないものです。
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▲1927年ブガッティ・ロワイヤル・タイプ41・クーペ・ナポレオン
ブガッティと聞いてロワイヤルをイメージする人も多いのではないでしょうか。自動車事業が軌道に乗ったことでエットーレ・ブガッティは超大型高級車「ロワイヤル」を企画します。当初25台の生産予定だったものの、あまりに高価すぎて実際に作られたのはプロトタイプを入れて6台に留まりました。
中でも一番有名な個体がクーペ・ナポレオンと呼ばれる5号車のこの個体でしょう。リアシートはクローズドボディ、運転席はむき出しという「主人と御者」という馬車時代の身分制度の名残を残すボディ形状です。
余談ですが、英語では自動車でも馬車でも操縦者(運転手・御者)は「Driver」で自動車と同様、馬車の操縦も「Drive」だそうです。機械用語やコンピューター用語で、制御装置や制御プログラムを「ドライバ」や「ドライブ」という理由がなんとなくわかるような気がしますね。
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▲1931年ブガッティ・ロワイヤル・タイプ41・エズデール・ロードスター
ブガッティ・ロワイヤルの2号車となるエズデールロードスターはフランスの大富豪アルマン・エズデールのオーダーによるもの。ヘッドライトが無いのは部品の欠損ではなく、実車がエズデール氏が「昼間しか乗らないから」という理由で、ヘッドライト無しでコーチビルドしたためですが、実際にはヘッドライトステーと配線は取り付けられていて、エマージェンシー用のヘッドライトがラゲッジには収納されていたと言います。
2号車はエズデール氏から別のオーナーの手に渡り、クーペボディに換装されオリジナルのロードスターボディは消息不明となるのですが、戦後になり熱心なブガッティ愛好家のシュルンプ兄弟により、ブガッティの工場に残っていた未完成のシャシーをベースに改めて新造を開始。何度も作業の中断を繰り返しながら1990年に完成したと言います。(おそらくこのモデルカーも戦後に新造された個体から採寸した物でしょう)
中には自動車モチーフのアート作品も!
会場内にはモデルカー以外にも自動車をモチーフにしたアート作品もありました。
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クラシックカーラリーをモチーフにした木版画です。
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▲版画家の牧田哲明さん
残念ながら日本では、そもそも自動車をモチーフにした作品がアートとして評価される機会そのものが無いのですが、モータースポーツやクラシックカーコレクションが文化的に高く評価されている海外では、牧田さんの作品のファンやコレクターが存在し、クラシックカーラリーなどのイベントに呼ばれることもあるそうです。
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▲作者の牧田哲明さん(右)と娘さんの塚越京子さん
現在、作品の管理とマネジメントは娘さんの塚越さんが行っているそうで、自宅には膨大な版画作品があり、いずれはアーカイブして、常設展示できるギャラリーを作りたいという構想もあるそうです。作品は購入希望であればご相談に応じるそうです。
東海地区のクラシックカーイベントに来た事がある方なら、このほのぼのとしたイラストに見覚えのある方も多いのではないでしょうか?
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こちらは名古屋在住のイラストレーター、小出茂鐘さんの作品。もともとは友人に出す年賀状にクルマの絵を描いていたそうですが、だんだんと往年の名車をテーマにしたイラストを描くようになったそうです。元アニメーション制作会社勤務というプロフィールからてっきりメカ作画を担当していたのかと思えば、意外や「メカの絵は実は苦手なんです」とのこと。
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▲作者の小出茂鐘さん
愛車はフィアットアバルト500Cエッセエッセで「気の強いお嬢様に振り回されてる」そうで名古屋は現行フィアット500愛好者の多い土地です。東海地区だけでなく、各地のクラシックカーイベントでブースを出展してイラストを販売しているので、ご興味のある方はぜひ一度小出さんのブースを覗いてみてください。
主催の岡本さんに聞くと、もともとは個人コレクションのミニチュアカーを展示する目的で始めたものだそうです。ほとんど口づてに告知しているようなイベントのため、筆者のようにまったくの新規できた人は珍しいようなのですが、臨時駐車場として使っていた豊川市役所の駐車場までいっぱいになるほどで、元が個人コレクションの身内展示イベントから始まったイベントとは思えない盛況ぶりでした。こうした草の根的な活動から、再び模型市場の活性化につながる事を願いたいものです。
[ライター・カメラ/鈴木修一郎]