
中古車の魅力
更新2018.10.31
国産スペシャリティ・カーのパイオニア。トヨタ・セリカ1600STリフトバックの魅力
外車王SOKEN編集部
高度経済成長期を駆け抜けた、国産スペシャリティ・カーのパイオニア。トヨタ・セリカ1600STリフトバック

トヨタのモータースポーツの歴史はセリカの歴史と言っても過言ではありません。その初代モデル、通称ダルマセリカとはどんなクルマだったのでしょうか?
トヨタ・セリカ1600STリフトバックとは
子供の頃、筆者のうちのクルマはカリーナでした。それまでのサニー1000からカリーナの1600。しかもオートマチック車に変わったのは確か昭和50年頃だったと思います。縦長のテールランプと紺色のボディがお気に入りでした。
カリーナと同じ下回りを持つセリカは、ちょっと若いお金持ちの乗るスポーツカー、という感じでした。今の時代になって振り返ると、セリカは国産初のスペシャリティ・カーという位置付け、なんて言われています。なるほどそうだったのかもしれません。
トヨタ・セリカ1600STリフトバックの魅力

▲丸目四灯のヘッドライト。最近のマルチリフレクターにはないレンズカットが美しい
箱形セダンですが、全体的に丸みを帯びたフォルムで「ダルマ」なんていうあだ名で呼ばれたりしていました。ダルマというと、ウイスキーの世界ではサントリーオールド。サイラス・モズレーさんのスキャットをバックに河原で焚き火をするCMが懐かしいです。ワイルドなイメージでした。奇しくもその頃のセリカのCMにも、「野生」とか「飼い慣らされてない」なんて言葉がちりばめられていました。幸せなファミリーの乗るカリーナ、ワイルドな若者の乗るセリカ。そういうイメージを打ち出していたのでしょうね。
余談ですが、この時代のクルマのCMは最後に「荒野に向かって走り去る」パターンが多かったように思います。対して今のは「こちらに向かって走ってくる」絵が多いですよね。旅立ちか、お帰りなさいか。クルマというものに求められるイメージは時代と共に変わっていくものなんでしょうね。

▲フルスケール180km/hのメーター。ほぼ振り切る実力を持っている
昭和50年代は自動車の性能というものがまだまだ基本的な部分で発展しつつあった頃で、トヨタも日産も高性能化にしのぎを削っていたのでしょう。そんな時代の空気を感じさせる国産車には、エコカー全盛のいまのクルマにない魅力があるように感じます。
セリカというクルマは、スポーティーなモデルとして日産スカイラインのライバルでした。少し時代は後になりますが、二代目のセリカでは「名ばかりのGT達は、道を開ける」なんていう挑戦的なコピーも飛び出すほど。スカイラインに対して対抗意識燃やしまくりですね。優等生のトヨタのイメージじゃないですよね。

▲リフトバック化したボディにエアインテークがアクセントを添える
セリカ1600GTはDOHCの2T-Gエンジンでしたが、1600STにはそのベースになったOHVの2Tエンジンが搭載されていました。ちなみにエンジンをDOHC化したのはヤマハでした。2000GTといい最近のレクサスLFAといい、トヨタのハイパフォーマンスエンジンはヤマハというイメージがあります。トヨタにエンジンの技術がないなんてことはあり得ないので、おそらく「こういう類のエンジンはヤマハに任せた方が早くて安いよね」っていう非常に合理的な大人の判断なんでしょうね。

▲70年代のメカっぽさを色濃くまとったテールランプの美しさ
ともあれ、セリカ1600STのOHVエンジンはシングルキャブ仕様で100馬力/6000回転、ツインキャブ仕様で105馬力/6000回転というカタログデータが残っています。1600GTのDOHCは115馬力/6400回転でした。DOHC化して最高出力を発生する回転数が400回転ほど高回転にシフトした、という感じですね。10馬力の差は回転数の差で、トルクはさほど変わらないのかもしれません。
GTはSTより60kgくらい重いというデータもありますので、スペックを見る限り動力性能の差は意外と小さいように感じます。ちなみに最高速(この頃のカタログには最高速が書かれてたのですね。いい時代でした)は、シングルキャブが170km/h、ツインキャブが180km/h、DOHCは190km/hということになっていました。実にわかりやすいです。おそらく実際に乗ればDOHCは「カムに乗る感じ」が味わえて、体感的にスポーティーなんでしょうね。
最後に、トヨタ・セリカ1600STリフトバックとは
全長4165mm、全幅1600mm、重さ900kgのコンパクトなサイズに100馬力を超えるエンジン。現代でも十分に通用する動力性能は、軽快な走りが楽しめそうです。高度経済成長期を走り抜けた、青春のセリカ1600STリフトバック。乗ればあの頃の景色が見えるかもしれません。
[ライター/外車王編集部]