更新2022.03.27
海外発の新トレンド 1/24ミニカーは定着するか?
北沢 剛司
ミニカーにはさまざまなスケールが存在します。昔から定番の1/43と1/18に加え、最近はアジアやアメリカを中心に伸びてきた1/64などが人気です。
そんな状況の中、密かに勢力を拡大しつつあるのが1/24スケール。海外では書店流通系ミニカーを中心に以前から存在していますが、日本でも少しづつ増え始めています。
そこで今回は、1/24ミニカーの魅力についてご紹介します。
■1/18と1/43の間を埋める1/24ミニカー
ミニカーの標準スケールは昔から1/43で、それは現在も変わりません。ただ、1/43スケールである程度売り上げが見込めるような車種は、すでに多くのメーカーからリリースされています。1/43が全体的に飽和状態になったこともあり、各メーカーは1/18スケールで積極的に新製品をリリース。1/18スケールはこの10年でミニカーの主流になるほどの増殖ぶりを示しています。
そんな1/18ミニカーも人気車種の多くが製品化され、こちらも飽和状態になりつつあります。しかも1/43スケールより高価で2万円台が主流。誰もが買えるような値段ではなくなっています。
そんな中、ビッグスケールの醍醐味とリーズナブルな価格を両立したアイテムとして密かに注目されているのが1/24ミニカー。1/43や1/18では多品種少量生産が可能なレジン製ミニカーが増えていますが、1/24ミニカーは昔ながらのダイキャスト製。それらの多くが書店流通系ミニカーのため大量生産が基本。それゆえ価格もある程度抑えられています。
また、プラモデルでは1/24スケールがカーモデルの主流であるため、模型ファンにとっても親和性のある内容となっています。
アウディ・スポーツ クワトロ S1のミニカーでサイズ比較をしてみました。上は1/18スケールのイクソ製、下は海外で販売されている1/24スケールのアシェット製品です。
ボリューム感では1/18スケールに敵わないものの、全長は18cmほどあるので見た目の存在感はあります。自分が好きな車種のミニカーをいろいろなスケールで集めたいと思っているファンにとっては朗報といえます。
■イタリアでシリーズ展開されている1/24の「WRC COLLECTION」
海外では昔から書店流通系ミニカーが活発で、1/24ミニカーも豊富です。
はじめにご紹介するのは、アシェットがイタリアで展開している「WRC COLLECTION」。同社では以前1/43スケールのWRCシリーズを展開していましたが、ほぼ同様の車種を1/24スケールで新たにリリース。ビッグスケールならではの存在感が魅力です。
ご覧の通り、パッケージはミニカーと冊子がビニールでパックしてあるだけのシンプルなもの。日本の書店流通系ミニカーのような化粧箱は存在しません。駅の売店やスーパーなどでもこのままの姿で売られています。
気になる製造メーカーですが、台座から外してメーカー名を確認したものの刻印はありませんでした。ただ、ミニカーメーカーのイクソでは新たに1/24スケールのWRC製品がシリーズ化されたので、イクソ製であることは間違いありません。
ちなみに価格は24.99ユーロ。日本でも流通しているウェリー製ミニカーと同等です。内容を考えれば十分リーズナブルといえるでしょう。
■海外で販売された1/24の「Collection Citroën」
日本の1/24ミニカーシリーズといえば、以前、フェラーリをシリーズ化した「レ・グランディ・フェラーリ・コレクション」がデアゴスティーニから発売されていました。同様に海外ではメーカーごとの1/24シリーズが展開されることがあり、オペルなど渋めのシリーズも存在します。
写真はアシェットが発売していた「Collection Citroën」のシトロエン VISA 1000 PISTES。この車種自体はグループBのレアなモデルですが、BX、XMなどの人気車種からSMの大統領専用車まで、さまざまな車種が製品化されました。
筆者はEbayで購入しましたが、ヤフオクなどで入手することも可能です。
■シリーズ延長になった「スペシャルスケール 1/24 国産名車コレクション」
アシェット・コレクションズ・ジャパンの「スペシャルスケール 1/24 国産名車コレクション」は、その名の通り、新旧の国産名車を1/24 ダイキャストミニカーで製品化するシリーズ。プラモデルでは製品化されていないレアな国産車が登場することもあり、一部のファンの間では密かに注目されています。
写真は141号のダットサン・フェアレディ 1600。2.0リッターエンジンを搭載したSR311のプラモデルはありましたが、1.6リッターエンジン搭載のSP311はプラモデルとしては製品化されていません。それだけに1/24スケール製品としては貴重な存在といえます。
創刊は2016年8月。140号で終了となる予定でしたが、好評のため180号まで延長されることが決まりました。定期購読者以外はなかなか入手し難い状態のため、人気車種の場合は即完売になることも珍しくありません。ちなみに価格は4,073円です。
■迫力のF1モデルがシリーズ化「隔週刊 ビッグスケール F1 コレクション」
最近ではデアゴスティーニ・ジャパンの「隔週刊 ビッグスケール F1 コレクション」が2022年1月4日に創刊。テレビCMをご覧になった方も多いのではないでしょうか。
写真は第3号のティレル P34。日本でもお馴染みの人気車種が今後も登場する予定です。
歴代のF1マシンを1/24スケールのダイキャスト製ミニカーで製品化したこのシリーズは、すでに海外で展開しているシリーズを日本に持ち込んだもの。価格は4,490円です。
■別売デカールでさらにリアル化!
「隔週刊 ビッグスケール F1 コレクション」の創刊号は、アイルトン・セナが初タイトルを獲得した1988年のマクラーレン MP4/4でした。しかし、タバコの広告規制のため当時のMarlboroロゴやマークが再現できず、非常にあっさりとした出来になっています。そのため、サードパーティ製のタバコロゴデカールが流通していて、それを貼ることでよりリアルな印象を与えることができます。
写真右はノーマルの状態、左がデカール貼付などのディテールアップを施した状態です。デカールはフランスの[STAND 26]というメーカーが販売しているもの。印刷が甘めのためクオリティはそれほど高くありませんが、手軽にディテールアップが楽しめるという意味ではありがたい存在です。
こちらは「隔週刊 ビッグスケール F1 コレクション」第2号のフェラーリ F2002に対応した、イタリアのTBD製デカール。別売のデカールを貼ることでプチ工作が楽しめるという意味においても、この1/24 F1モデルは面白い存在です。
■非ライセンス品の自称「1/24」ミニカーも
eBayをウォッチしているときに中国メーカーによる1/24ミニカーを見つけました。「XLG」というブランドで、主に世界の高級車を製品化しています。
写真はメルセデス・マイバッハ S 600 プルマン風のモデルです。「風」を付けたのは、この製品がメーカーのライセンスを取得していない非正規品のため。よく見ると、マイバッハのエンブレムが微妙に違うデザインに変えられていたり、パッケージの写真も加工されているなど、なんともあやしい雰囲気。モデル自体も側面の窓ガラスが省略されるなどチープ感が漂っています。
こちらは同じ「XLG」ブランドによるロールス・ロイス ファントム「風」モデル。パッケージを見ると、フライングレディーが小さな光に修正されていることがわかります。こちらも側面の窓ガラスはなく玩具然とした出来映え。筆者が購入した製品の価格は二千円台で、前述のプルマンも同価格帯でした。
このモデルの特徴は、開閉箇所が豊富でライト点灯および盗難防止警報音のギミックが付いていること。遊びゴコロは満点です。
しかし、最大の難点がこれ。
1/24スケールの「国産名車」製品と比べるとあまりにも小さいことが分かります。そう、1/24という表記はまやかしで、実際のサイズは1/28スケール程度。スケール表記に偽りがあるのです。
そんな非正規品ならではのいい加減さも、ある意味「味」なのかもしれません。
■今後の発展に注目
このようにいろいろなアイテムが玉石混交で流通している1/24ミニカー。昔から1/24ミニカーをリリースしているブラーゴやウェリー製品を含めて、今後さらに発展していく可能性があります。
果たして1/24スケールはミニカーの新たなトレンドになり得るのか?今後も引き続きウォッチしていきたいと思います。
[ライター・画像/北沢剛司]